Rauber Kopsch Band2.523   

 幅の広い3つの腹壁筋はこの神経から細い筋枝Rami muscularesを受ける.またその知覚性の終枝には外側のもの内側のものとがある.

 外側の終枝は内側鼡径部の皮膚および(常にとは限らないが)大腿の内側部の皮膚のなかで広がる.

 内側の終枝はこれに反しで恥丘の皮膚と陰嚢(大陰唇)とに達する.これを陰嚢枝Rami scrotales(陰唇枝Rami labiales)という.

3. 陰部大腿神経N. genitofemoralis(図550, 551, 553555)

 これは(2根をもって)第1腰神経係蹄およびL IIから発し,大腰筋の中あるいはその外で次の2終枝に分れる.この2終枝が別々に腰神経叢から発していることもある.

a)陰部枝R. genitalisはLIに由来する陰部大腿神経の線維からなり,大腰筋の内側縁の近くを下行して,外腸骨動脈に1枝をあたえ,外腸骨動静脈と交叉して,腹膜下鼡径輪の内側で曲がって,鼡径管の後壁に上つてくる.ここで陰部枝は精索(あるいは子宮鼡径索)の内側面に達し,これとともに鼡径管を通りぬけて陰嚢に入る.この神経は挙睾筋と肉様膜とに分布し,また精巣動脈のまわりの交感性の神経叢と結合している.鼡径管からでたのちは腸骨鼡径神経の小枝と吻合する.

b) 大腿枝 R. femoralisはLIIに由来し,陰部枝の外側で大腰筋の前を下方に走り,大腿動静脈の外側で鼡径靱帯より下方で大腿の前面の皮膚に達する.その若干の枝は卵円窩を通ってでるが,別の枝はその外側を通っている.その最も遠く達する枝は時として大腿の中央部まで追跡される.

 陰部大腿神経の変異(Rugeによる);a) このものは独立の神経どしては存在していないことがあって,その時には陰部枝は腸骨鼡径神経の1枝となり,大腿枝は大腿神経の前枝の1つとなっている.b)大腿枝が大骨盤のながで腓側大腿皮神経より発し,独立して鼡径靱帯より下方で皮膚に達することがある.c)大腿枝が大腿神経の1枝をなしていることがある.

4. 腓側大腿皮神経N. cutaneus femoris fibdlaris (図550556)

 これは第3腰神経係蹄より起こって,大腰筋の外側面に達し,次いで腸骨筋の上にでて,腸骨筋膜に被われて前腸骨棘のあたりにすすみ,次いで鼡径靱帯と深腸骨回旋動脈の下を通って大腿の領域に達する.ここでは大腿筋膜め浅葉の下にあって,各1本の太い方の前枝と細い方の後枝とに分れ,両者は別々に大腿筋膜を貫く.そして後枝は大腿筋膜張筋の上を後方に向かってすすみ,臀部にまで達する.前枝は鼡径靱帯の3~5cm下方で皮下に達し,外側広筋の前面に沿って下行して膝の外側部にまで達し,特に外側部への枝をだしている.

 変異(Rugeによる):a) この神経は鼡径靱帯の上方で体壁を貫くことがある.b)前腸骨棘よりはるかに下方で次腿筋膜を貫くことがある.c)普通よりいっそう急な傾斜で腸骨窩を通り,鼡径靱帯の中央よりやや下方で大腿筋膜を貫くことがある.d)大腿神経の方向に急な傾斜で下方に走り,1本の枝によって大腿神経と結合している.その枝が大腿において横の方向に走った後にはじめて外側部に達する.

5. 大腿神経N. femoralis(図550, 551, 554556)

 これは3根をもってLII・LIII・LIVからおこり,また第4の根がおそらくLIより発する.太くて扁平な幅5~6mmの1幹をなし,この幹は大腰筋と腸骨筋とのあいだを通り,鼡径靱帯の下で筋裂孔の中を大腿動静脈の外側を走って大腿に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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