Rauber Kopsch Band2.524   

大腿に移行するとこの神経は次第に腸腰筋の内側面に達し,ここで鼡径靱帯より4~5cm下方で多数の枝に分れる.その一部は運動性の枝であり,一部は知覚性の枝である.

 その知覚性の枝は大腿前面の全体に分布し,運動性の枝は大腿の伸筋に,また大腰筋と恥骨筋とに達する.終枝に分れる前にこの神経からは次の枝がでる:すなわち

 若干の前皮枝Rami cutanei ventrales・腸骨筋の骨盤内にある部分への2~4本の枝・大腰筋への1枝ならびに固有大腿動脈神経N. arteriae femoralis proprlusである.固有大腿動脈神経はすでに骨盤腔内において大腿神経より分れ,この神経とともに走り,鼡径靱帯より下方でこれから離れ,大血管の鞘について下行する.大腿深動脈に伴って走るその小枝のうちの1つが栄養孔を通って大腿骨の内部に入り,他のものはその骨膜に入る.--恥骨筋への神経は大腿動静脈のうしろでこの筋の前面に達する.大腿神経の終枝は次のものである:

a)前皮枝Rami cutanei ventrales.(図552555)  多数の枝であって,いろいろな場所で大腿筋膜を貫く.これらの枝のうち一部のものは縫工筋を貫いている

 その数多くの枝は次のぐあいに走っている:

α. 大腿の前面の中央部へ2本の枝がゆく.その1本は縫工筋に1枝をあたえ,多くはこの筋をその上部1/3で貫き,次いで大腿筋膜を貫き,大腿直筋の前を下行して膝にまで達する.他のものは初めは前者と合していることもあり,ごくまれにしか縫工筋を貫いていないで,多くのばあいこの筋の内側面で皮膚に達し,膝にまで進む.これら両枝は大腿枝(陰部大腿神経の)としばしば結合している.--β. 大腿の前面の内側部への枝が多くは2~3本ある.そのうちの1本は筋膜を卵円窩のすぐ下方で貫き,大伏在静脈に沿って走り,膝にまで追跡きれる.これはふつう閉鎖神経の皮枝と結合する.

 それよりいっそう太い第2の神経は,しばしば2本になっていて,これは縫工筋の内側縁に沿って下方に走り,膝蓋骨の上方で筋膜を貫き,膝の内側面の皮膚のなかに広がる.

b)筋枝Rami muscularesは大腿の伸筋にいたる.

それをくわしく述べると:

α. 大腿直筋への1枝.この枝および若干の別の筋枝から細い小枝が出て股関節の関節包に達する.--β. 外側広筋への1枝.--γ. 中間広筋への若干の枝.これらの枝のうちで下方のものは膝関節筋をも支配するが,かなり太い枝がこの筋の範囲を越えて,骨膜および膝関節の関節包にいたる.--δ. 内側広筋への1本の神経.これもやはり1本の目だつ終枝を膝関節の関節包に送っている.

c)伏在神経N. saphenus(図554556)は大腿神経のだす最も長い枝であって,はじめは大腿動脈の外側面にあり,さらに下方では大腿動脈の前面に接し,大腿動静脈とともに内転筋管に入り,広筋内転筋板Lamina vastoadductoriaを貫いて,縫工筋に被われて内側広筋と大内転筋とのあいだの溝を下行して膝の内側面に達する.ここでは縫工筋の腱のところで皮膚の下に達し,大伏在静脈に接して,この静脈に沿って下腿の皮下をさらに下方に進み,脛骨躁の前を通り,足の内側縁の皮膚のなかに放散して終る.その枝の1本がここで浅腓骨神経と結合している.伏在神経は母指にまで達することなく中足骨の領域で終ることが多い.1本の枝を膝関節にあたえるほかに次の枝をだしている:

α)膝蓋下枝Ramus infrapatellarisは膝の内側面から膝蓋骨の前面までの皮膚に達する(図555).

β)内側下腿皮枝Rami cutanei cruris tibiales,内側の前枝と内側の後枝とがあって,これらは脛骨の内側面を被う皮膚と腓腹部の内側面の皮膚とに分布する.

S.524   

最終更新日13/02/03

 

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