Rauber Kopsch Band2.528   

b)坐骨神経叢の枝

1. 梨状筋への枝,これはSIIに由来する.

2. 上腎神経N. glutaeus cranialis,これはLVよりSIIにわたる範囲から2根をもってでる.

 この神経は各1本の上方と下方の枝に分れ,骨のごく近くを走って,梨状筋の上方で,大坐骨孔の上部を通りぬける(図557).細い方の上方の枝は中腎筋の下にいたり,小臀筋の上縁に沿って前方に走り,中臀筋のなかで枝分れする.下方の枝は中臀筋と小臀筋のあいだを前方に走り,中臀筋に枝をあたえ,小臀筋に分布し,最後の枝を大腿筋膜張筋に送っている.

3. 下臀神経N. glutaeqs caudalis.これはしぼしば後大腿皮神経といっしょに合してSIとSIIからおこり,この袖経叢の後面からでる.これは梨状筋の下方で骨盤腔を去り,その神経束がたがいに離開しつつ大胃筋のなかに分布する.また股関節の関節包にもいくつかの小枝をあたえている(図557).

4. 後大腿皮神経N. cutaneus femoris dorsalis(図557, 558)は下臀神経とともに梨状筋の下縁で骨盤腔を去り,初めのうちは坐骨神経N. ischiadicusに接して坐骨結節と大転子とのあいだを走って,大腿の後面に達し(はじめは筋膜の下にある),この面において膝にまで広がる,そのあいだにこの神経は内外両側に枝をだし,これらの枝が大腿筋膜を貫くのである.なおその終枝は腓腹部の皮膚にも達し,そこでは小伏在静脈の1枝に接している.この神経は臀部の皮膚と大腿後面の皮膚とに知覚性の枝をあたえるのであって,その枝としては次のものがある:

α)下臀皮神経Nn. clunium caudales(図558),これは2~3本あって,大磐筋の下縁を回って上方に走り,この部分の皮膚に終わっている.

β)会陰枝Rami perineales(図558)は坐骨結節の下方を下に向かって凸の弓をなして走り,会陰と大腿とのあいだの溝に達し,会陰と大腿部の皮膚に枝をあたえ,陰嚢(大陰唇)の外側面で終り,そのさい陰部神経の枝と結合している.

5. 坐骨神経N. ischiadicus(図557)は仙骨神経叢のすべての根より生じ,この神経叢の主要な続きをなしている.坐骨神経は梨状筋の下縁で骨盤腔を去り,最初は大臀筋に被われて坐骨結節と大転子とのあいだで小さい回転筋群(両双子筋, 大腿方形筋など)のうしろを下行する.さらに下方では大内転筋の後面に接し,ここでは坐骨結節から起る諸屈筋に被われて,膝窩に達する.膝窩では坐骨神経はそのおよそ中央の位置をしめ,膝窩動静脈のいくらか外側かつ後方にあり,丈夫な大腿筋膜によって被われている.そして多くのばあい膝窩の上角Proximaler Winkelで幹の続きをなすところの太い方の脛骨神経N. tibialisと膝窩の外側角fibularer Winkelに達するところの細い方の総腓骨神経N. fibularis communis(図557, 562)とに分れる.この両神経がすでに大腿の中央で分れていることがしばしばあり,それよりずっと上方でこの神経叢から出るところですでに分れていることもある.人為的にこの両神経幹を分けてみるといつでも大坐骨孔の辺まで分離することができる.

 坐骨神経は運動性の枝を次の諸筋にあたえる:

 すなわち股関節の筋Hüftmuskelnについては,内閉鎖筋・2つの双子筋・大腿方形筋,さらに大腿の屈筋の全部および下腿と足との筋の全部である.また知覚性の枝を下腿と足の皮膚にあたえるが,それは伏在神経が分布する範囲を除くのである.その脛骨神経に属する部分tibialer Teilからは次の諸枝がでる:

a) 内閉鎖筋への神経.これは坐骨神経の幹が大坐骨孔をでるときに分れ,直ちに小坐骨孔を通って内閉鎖筋の内側面に向い,この筋のなかに入る.小坐骨孔ではその上方の角に位置を占め,陰部神経はこれに反して同じ孔の下方の角にある.陰部動静脈はこれら両神経のあいだを走っている.

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最終更新日13/02/03

 

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