Rauber Kopsch Band2.543   

 1頚神経の交通枝は直接にその前枝から,あるいは第1頚神経係蹄Ansa cervicalis primaから,あるいはその前枝と舌下神経とが作る係蹄からおこる.2頚神経の交通枝はその前枝から出るのがふつうである.第1と第2頚神経の交通枝は上頚神経節に達している.

 3と第4頚神経の交通枝は直接にその前枝から発することもあり,あるいはそれらの頚神経がつくる係蹄から出ることもある.これらの交通枝は深頚筋群の上(前方)あるいは下(後方)を通って交感神経幹に達する.第3頚神経の交通枝もやはり上頚神経節に加わる.この神経節は,いくつかの神経節,それは少くとも4の神経節が融合して1つになったものである.4頚神経の交通枝も第3のものと同じぐあいになっているか,あるいは第5と第6頚神経の交通枝と同じく中頚神経節が存在するときにはこれに入っている.あるいはまた第4頚神経の交通枝は第5と第6頚神経の交通枝がやはりそうであるように,中頚神経節が欠けているときには上頚神経節と下頚神経節とのあいだにあるこれら両神経節の結合索Verbindungsstrangに接着するのである.

 7と第8頚神経の交通枝は交感神経の下頚神経節に達する.第6交通枝が同じ関係を示すばあいもすでに知られている.

 腰神経の交通枝は長くて,これらは椎間孔から腰椎の前面までの長い道のりをすすむのである.これらの交通枝はこの長い道を横あるいは軽く斜めの方向にすすみ,そのさい大腰筋の筋束のあいだを走り,ついで椎体の前面と大腰筋の内側の腱弓とのあいだで上下方向にのびている裂け目のなかに現われる.これらの交通枝はふつう重複しており,しばしば次のように配列している.それは同一の神経節が2つの異なる腰神経と結合する,しかしまた別のばあいは1つの交通枝が小枝に分れて,2つの隣接する神経節と合している.

 最後に述べたことはまた仙骨神経の交通枝についてもあてはまる.仙骨神経の交通枝はしばしば重複しているが常に短くて,前枝が前仙骨孔から出るところですぐにこれから分れて,内側に向い,近くの[交感]幹神経節に達し,そのさいこれらの交通枝は外側仙骨動脈の上を越えるのである.

 上に述べた数多くの交通枝が脊髄神経系あるいは脳脊髄神経系と交感神経系とのあいだを結びつける.脳神経にも交通枝は豊富に存在する.交通枝はふつうに交感神経性の根Wurzelnと名づけられている.根という名前は交感神経幹に脳脊髄神経系の線維を導くということを意味している.交感神経幹には交通枝によって効果性ならびに受容性の線維が導かれるのである.この両種の線維は脳脊髄神経の両根に由来している.しかしまた交通枝によって脳脊髄神経系に交感神経性の線維が導かれる.それゆえ交通枝は一部は脳脊髄神経性の枝,一部は交感神経の枝であり,後者の中心は交感性の神経節のなかにある.

 交感神経の線維が交通枝によって脊髄神経の末梢部に導かれ,それも主としてその前枝Ramus ventralisの末梢部に導かれる.前枝が脊髄神経からでる4つの枝のうちで最も太い枝でありその分布領域も最も広い.しかしまた後枝Ramus dorsalisおよび硬膜枝Ramus meningicusのなかにも交感性の線維が達してい為. 最後にとりわけ多量の交感神経の線維が交通枝Ramus communicansのあらゆる末梢分布にしたがって内臓と血管に達するのである.

 身体の多くの場所では上述のように各脊髄神経への交通枝が2本あるいはまた3本も存在する.これらのうちで1本嫡主として髄鞘をもつ脊髄性の神経線維より成り,他の1本は特に交感神経からの灰白線維(無髄)を有っている.そのばあい前者は白く見え,後者は灰白色に見える.しかしたいていは両交通枝のそれぞれに両種の線維が混在している.

脳脊髄神経とその神経節の構造

a)神経幹と神経根Nervenstämme und Nervenwurzeln

 脳脊髄神経は主としてシュワン鞘 Schwannsche Scheideをもった有髄性の線維よりなり,反射光のなかで白く見える.この有髄神経線維には一部は散在した状態で,また一部は小さい束にまとめられて無髄神経線維がまじっている.脳脊髄神経の束は豊富な結合組織によって包まれ,かつこれによって貫ぬかれ,この結合組織は特別なぐあいに配列している.神経根では結合組織が初めは柔膜の続きどしてわずかに存在するのみであるが,神経根が外に出てゆくにつれそれがだんだんと豊富になり,そのさいクモ膜鞘と硬膜鞘とがそれぞれの髄膜の続きとしてこれらの神経根を包み接着している.

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最終更新日13/02/03

 

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