Rauber Kopsch Band2.548   

 Köllikerによれば筋線維の長さが神経の関係において主要な役目を演じている.1つの筋において筋線維が筋じしんと同じだけの長さであると,神経はその筋の中では1つの場所に限つて広がっている.

 縫工筋の各筋線維はそれぞれ3~4個の運動終板を有っていう(Sandmann).このことから個々の筋線維がもつ運動終板の数も考慮に値いする.

 筋の神経分布を理解するのに最後に重要なことは筋の発生のことであり,それも個体発生と系統発生の両方である.

 嗅糸Fila olfactoriaは第1脳神経をなしており,その由来については脳神経と脊髄神経に属する知覚性の根の発生とある程度の関係を示すのである.

 終神経N. terminalisは明かに嗅糸と近い関係にある.

 視神経Fasciculus opticus, Pedunculus opticus v. Wijhe, Augenstielはその他の脳神経や脊髄神経と形態学的な関係をもつような末梢神経では決してなく,脳の異なる部分を結びつける中枢部間の1つの結合索である.それが結合している脳の部分というのは一方では網膜,他方では四丘体と間脳と終脳である.

 第3と第4と第5の脳神経は動眼神経N. oculomotorius,滑車神経N. trochlearis,三叉神経N. trigeminusであり,これらに三叉神経群Trigminus Gruppeとして総括することができる.

 この三叉神経群の中では三叉神経じしんが1鰓弓erstei Kiemenbogen,すなわち顎骨弓Kieferbogenの神経である.それは鰓分節Brdhchiomerie,すなわち腸壁と体壁前方部の分節構造に判断の標準をおいて,また顎骨弓から出来てくる諸構造の神経支配を考慮すると,こうなるのである.

 そうすると三叉神経の第1枝は鰓前節様構造Präbranchialer Metamerに属している.動眼神軽と滑車神経とは三叉神経の領域に属する.特にそれらの起始核を考えてみると,これは運動性起始核の内側部にあたっており,一方では三叉神経の運動核がその外側部をなしている.

 内耳神経-顔面神経2鰓弓の神経であって,ここでもまた分類の基礎として鰓分節Branchiomerieが役だつのである.内耳神経はその形態学的な本質からは,聴覚および大きな平衡装置の任務をもつにいたった1つの知覚性の皮神経である.この群には運動性の内側の神経として,外転神経N. abducensが属している.この神経の起始核のある位置がそれに相当している.

 第9と第10と第11脳神経,すなわち舌咽神経N. glossopharyngicus,迷走神経N. vagus,副神経N. accessoriusはいわゆう迷走神経群Vagusgrmppeをなしている.

 舌咽神経Nglossopharyngicusは3鰓弓の神経である.

 しかし迷走神経N. vagusはそれより下位のいくつかの鯉弓の神経であり,これらの鯉弓に属する神経がまとまって1つの強大な総合神経をなしている.すなわち迷走神経と舌咽神経とは神経幹のなかにある神経節をそれぞれ2もっていて,われわれが今日までに知りえた限りでは,これらの神経節はすべてたがいに一致した定まった構造を有つのである.

 副神経N. accessoriusは脊椎動物のかなり高等なものではじめて独立レた構造物として現れるもので,これは迷走神経根の運動性の部分,すなわち疑核Nucleus ambiguusにはじまるものと同一の系列に属するのである.

 第12脳神経,すなわち舌下神経N. hypoglossusは部分的に妹舌咽神経と迷走神経の分布範囲よりももっと前方の領域に分布するのであって,すでに古くJ. Müllerが想像したようにかなり多くの脊髄神経に相当し,これらには多くは(知覚性の)後根を欠いている.これらの脊髄神経がかたまってただ1つの舌下神経となり,それが2次的に頭の領域に入って,脳神経の1つとなったものである.

 この考え方はFroriepによって確証された,彼は初めて(胎児において)舌下神経に属する知覚性の神経節を見いだしたのである.

 

V.交感神経系Systema nervorum sympathicum(vegetatives, sympathisches oder Gangliennervensystem)

 交感神経系はしばしば自律神経系“autonomes Nervensystem”とも呼ばれるが,しかしこの名称はまた副交感神経だけにも用いられる.(自律神経系という名称は交感神経系および副交感神経系を合せたものにもちうるのがむしろ普通であると思う.本書では交感神経系という名称を広い意味で,すなおち副交感神経を含めたものに用いている.(小川鼎三))

 これまでに見てきた神経系の多くの部分と同じく交感神経系の成分にも分節的の配列がはっきりと認められる(図567).つまりこれは次の諸部からなり立っているのである:

1. 脊柱に沿って各側にならんでいる多数(20~25)の神経節,すなわち[交感]幹神経節Ganglia trunci sympathiciであって,これらは縦走する短い結合索,すなわち節間枝Rami intergangliares, Zwischensträngeによってたがいに結合し左右それぞれ1本の縦の索,すなわち交感神経幹Truncus sympathicus,いわゆるGrenzstrang des SympathicusあるいはStammstrang des Sympathicusをなしている.

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最終更新日13/02/03

 

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