Rauber Kopsch Band2.554   

2. 深心臓神経叢Plexus cardiacus profundus.これは浅心臓神経叢よりもいっそう右方にあり,同時にやや上方にあって,大動脈弓のすぐ後方でこれと気管分岐部とのあいだ,かつ肺動脈より上方にある.この深心臓神経叢は浅心臓神経叢よりもいっそう緻密な網をなし,かついっそうつよく発達している.

 心臓神経叢の浅深の両部分からはいろいろな方向に結合枝と末梢への枝とがでている.

a)気管神経叢および肺神経叢との結合枝.

b)大動脈肺動脈との幹へゆく枝.後者は肺枝Rami pulmonalesといい,これは肺神経叢 Plexus pulmonalisとして肺動脈の枝に伴なってすすみ,迷走神経の肺神経叢と結合している.

c)左右の心房の壁に達する枝.

d) (右と左の)心冠状動脈神経叢Plexus coronarii cordis (dexter et sinister).

 右心冠状動脈神経叢Plexus coronarius cordis dexterは大動脈の根部を囲んで右冠状動脈に達し,豊富な叢形成をなしつ.この名前の動脈に伴なっている小枝の集りであって,この神経叢から多数の細い枝がでて右の心室に達し,またそれより数の少い枝が右の心房に達している.左心冠状動脈神経叢Plexus coronarius cordis sinisterは前者よりもいっそうよく発達し,肺動脈の後方で左冠状動脈の初部に達し,この動脈に伴なってのびている.これは右のものと同じようなぐあいに多くの枝を左の心房と左の心室とに送る.

 左右の心冠状動脈神経叢は冠状溝の範囲において,また心房の壁にある神経叢において,顕微鏡的な神経節をたくさんにもっている.これらの神経節はみな心臓の表面の近くで心外膜のすぐ下にあり,そこからわずかな深さの所だけに入りこんでいる.

心臓神経の終末

 心筋の神経はまず血管に接しているが.また独立して走っている神経束もある.これらの神経は網目のあらい神経叢を作っている.この神経叢から出る神経線維はそれからintermuskuläres Endgeflecht(筋間終末神経叢)をなしている.これは極めて細い無髄線維よりなり,筋線維に密接して存在する.運動性の神経終末は人の心筋線維においてはこれまでに証明されたことがない.

 しかし心臓は運動性の神経および運動性の神経終末だけを有っているのでなく,心膜も心内膜もまた神経をそなえている.哺乳類の心内膜(原著には心筋層Myocardとある.(小川鼎三))にある神経は,A. Smirnowによれば心筋層の枝から発している.その線維の多くは無髄である.心内膜のすぐ下では多くの小枝が目の荒い網状のsubendocardiales Geflecht(心内膜下神経叢)を形成し,これからいっそう細い神経束が出ている.それに続いて心内膜の深部に本来のEndocardialnervengeflechte(心内膜神経叢)がある.それから出るいっそう細い束と少数の線維とが合してsubendothetiales Geflecht(内皮下神経叢)とよぶべきものになっている.

 有髄線維とその枝とが心内膜のいろいろな深さで知覚性の終末分枝をなして終わっている.

 心膜Pericardiumのすぐ下には多くの細い神経幹があり,これは主として有髄線維,一部は無髄線維よりなっている.その終末装置Endapparateは細い神経の枝が集つだ網でできていて,これらの枝のあいだには星状の結合組織細胞が支持装置として存在している.この網からは小枝が分れて出て,これが新たに終末装置を成している.最後に述べた終末装置の数は非常に多い.心内膜の中にもこれと同じ種類の終末装置がある.

 血管の内皮のすぐ下に,また外膜の中にもやはり同様な終末装置が見られるのである.

 

B. 交感神経系の胸部と腹部Pars thoracica et abdominalis systematis sympathici
1. 分枝状態Astbildtingと結合関係Verbindungen

 交感神経系の胸神経節と腰神経節とは連鎖状をしているが,これには次に述べる諸枝および結合がみられる:

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最終更新日13/02/03

 

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