Rauber Kopsch Band2.561   

2. 交感神経系の骨盤部に属する神経叢

 下直腸神経叢Plexus rectalis caudalis, kaudales Beckengeflecht.

 これは上直腸神経叢の続きから生じていて,初めは1本の索をなし,これが小骨盤の内腸骨動脈の内側面に接し,さらに直腸の外側面に達している.小骨盤の底では肛門挙筋に密接して,広がって1つの豊富な神経叢となり,これは交感神経幹からの諸枝を受け,さらにSIIとSIIIとの枝を受けることによって著しく強くなっている.

 この神経叢からは骨盤内臓へ多数の神経がでる.直腸神経叢と膀胱神経叢は男女ともに存在する.この2つの神経叢のあいだに男では精嚢腺と精管の神経叢Plexus glandulae vesiculosae et ductus deferentisがあり,これは前立腺神経叢Plexus prostaticusによって陰茎海綿体神経叢に移行し,膀胱神経叢Plexus vesicalisと続いている.女ではこれらの神経叢の代りに子宮腟神経叢Plexus uterovaginalisがある.--下直腸神経叢からは次に述べる2次の神経叢sekunddires Geflechtがでる:

α)膀胱神経叢Plexus vesicalis.膀胱神経叢は下直腸神経叢の前下部ならびに精管神経叢および前立腺神経叢(子冨腔神経叢)からできている.この神経叢から出る枝は初めは血管に沿ってすすみ,後には独立して走るところの膀胱神経Nervi vesicalesである.膀胱神経叢は有髄線維に富み,これらの線維はSIIIとSIVとから来る.尿管の下部に分布する神経は同様に下直腸神経叢から出ており,膀胱神経叢と結合している.尿管に達する神経のうちの1本は骨盤神経叢の初まりの部から発して,尿管と骨盤の血管とが交叉するところで尿管に入る.第2の尿管への枝がさらに下方につづいてあり,第3のものは第1仙骨神経節から出てこれに達する.

β)精管神経叢Plexus ductus deferentis,精嚢腺神経叢Plexus glandulae vesiculosaeおよび前立腺神経叢Plexus prostaticus.

 この3者の合したものは精嚢腺と精管膨大部とを取りまき,神経細胞を含む1つの神経叢でできていて,これから出る線維は精管に伴なって走る.そのうちの1本が鼡径管に達して,精巣動脈神経叢とともに精巣に達する.下方では精嚢腺神経叢は前立腺神経叢に移行し,後者は前立腺と肛門挙筋とのあいだにあって,小さい神経節を含んでいる.

 この神経叢にもSIIIとSIVからの線維が達し,Eckhardtはその中に陰茎の勃起神経Nn. erigentesが存在することを証明した.LovénおよびNikolskyによればこの勃起神経の経路のなかに神経細胞があるという.陰茎の血管を狭くする線維は陰部神経N. pudendalisのなかに含まれている(Lovén).

[図572]新生児の交感神経幹の骨盤部 弱拡大.s1~s4 4個の仙骨神経節;c 対をなしてはいないが,なお2つの神経節が合したものであることを暗示している尾骨神経節とそれから末梢へ出るかなり太い枝,これは尾動脈に伴なって走る.尾骨神経節の背方には小さい介在神経節が1つある;ri 最下部の2個ないし3個の仙骨神経節のあいだを結ぶ横枝.

γ)陰茎海綿体神経叢Plexus corporis cavernosi penis.これは前立腺神経叢の続きをなして,尿道隔膜部に沿い,次いでいく本かの枝となって深会陰横筋を貫き,陰茎根の背側面に達し,そこで陰部神経の諸枝と結合している.この結合からは陰茎海綿体神経Nn. corporis cavernosi penisが出る.これには若干の小陰茎海綿体神経Nn. corporis cavernosi penis mmoresと各側に1本ずつの大陰茎海綿体神経N. corporis cavernosi majorとがある.このうち前者は陰茎海綿体の根のなかに入る.(大)陰茎海綿体神経は尿道海綿体とそのがわの陰茎海綿体とに枝を出し,後者の背側面に沿って前方に走り,陰茎背神経の諸枝といく重にも結合し,けっきょく陰茎海綿体のなかで終る.

S.561   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る