Rauber Kopsch Band2.567   

 節後線維の大多数は交感神経の諸枝とこれらがつくる神経叢のなかを走っていろいろの内臓にいたり,あるいは交通伎を通って脊髄神経に達し,脊髄神経の枝とともにその終末領域(血管・皮膚とその付属器官〉にいたる.少数のものが脊髄神経節に達する.

 求心性の経路は主として無髄性の線維よりなり,その一部は節後線維であり,一部は脊髄神経節の細胞から末梢への突起である.これらの突起は興奮を脊髄神経節の細胞に伝え,その興奮は脊髄神経節の細胞からさらに中心の方向に伝えられるが,それも脊髄に達して反射を起すものもあり,また脳に達して意識にのぼるものもある.

 その機能および一定の化学的物質に対する態度によって次のものを区別する:

I. 狭義の交感神経は交感神経幹とその神経節,さらにこれらの神経節からでる多くの枝とそれがつくる神経叢とよりなる.一その節前線維は脊髄の第8頚分節から第2あるいは第3腰分節にまで達する部分のみから発している(図579).

II. 副交感神経Parasympathicus.これは形態学的には識別できず,ただ機能的な概念でしかない.これにはHirtによれば,交感神経幹から起らないで,交感神経と相ならんで植物性機能の諸器官に分布する神経要素がみなこれに属するのである.その節前神経は中脳(脳部Pars encephalica).延髄(菱脳部Pars rhombencephalica).仙髄(仙髄部Pars sacralis) (S. II~IV)より起こっている.Hirt, Kiss, Ken Kuréによれば副交感神経線維は脊髄のすべての部分から発する(Kuréの脊髄副交感神経Spinalparasympathicus),それゆえ次のものを区別しなければならない:

I. 脳部Pars encephalicaは1. 中脳部Pars mesencephalicaと2. 菱脳部Pars rhombencephalicaに分れる;

II. 脊髄部Pars spinalisは頚髄部Pars cervicalis・胸髄部Pars thoracica・腰髄部Pars lumbalis・仙髄部Pars sacralisに分れる(図580).

 それゆえ交感神経系と副交感神経系との節前線維は中枢神経内のたがいに異なった場所から起るが,両者の節後線維同一の器官を支配している(図579).しかし両系統は多くは反対的に作用するのである.

 たとえば動眼神経のなかを走る副交感線維は瞳孔を縮小させるようにはたらくが,交感神経に由来する線維はこれを拡大させるようにはたらく.また副交感性である迷走神経は心臓の運動を抑制し,交感神経はこれを促進する.これとは反対に腸ではその運動を迷走神経が促進するが,交感神経はその運動を抑制する.一定の化学物質に対する態度については生理学および薬理学の成書を参照されたい.

  Langley , Das autonome Nervensystem, übersetzt von E. Schilf, Berlin 1922. Ken Kuré, Über den Spinalparasympathicus. Basel 1931.

B. 詳説Im besonderen
I. 狭義の交感神経(図580)

 その節前線維は第8頚分節から第2あるいは第3腰分節までの範囲で側柱のなかおよびその後方に続く灰白質の辺縁部にある細胞から発する.これらの線維は前根とともに脊髄の外にでて,白交通枝を通って交感神経幹に達する.交感神経幹の中ではC. VIIIおよびTh.1~VIからの線維は上方にだけ進み,Th. VII~Xからの線維は上方と下方とに進み,Th. XIよりLIIIまでからの線維は下方にだけ進む.これらは交感神経幹の神経節の中で終るか,あるいは腹腔神経節・上腸間膜動脈神経節・下腸間膜動脈神経節のような末梢の神経節の中で終る.その節後線維は交感神経の諸枝を通っていろいろの内臓に達し,あるいは交通枝をへて脊髄神経に,またこの中をすすんでその終末領域に達する.

 頚部交感神経Halssympathicusの節後線維は瞳孔散大筋に分布するが,それにはこの線維は頚動脈神経叢・毛様体神経節の交感根・短毛様体神経の仲介によってこの筋に達している.さらに眼窩と上下の両眼瞼にある平滑筋・頭部と頚部の脈管と汗腺,さらに唾液腺と涙腺にも達するのである.

S.567   

最終更新日13/02/03

 

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