Rauber Kopsch Band2.577   

核をもつ細胞体は非常にまちまちな高さにあるので,両突起の長さがおのおのの嗅細胞によってはなはだふそろいである.それゆえ断面でみると細胞体とその核は1つの幅のひろい帯のなかにある.この帯は補充細胞の層から上皮の高さの中央を越えるあたりまで伸び,ここで1線をなして終わっている.この幅のひろい1帯を円核帯Zone der runden Kerneという(図595, 597).その核はみな1個の明瞭な核小体をもっていることが特徴である.嗅細胞の配置は1つの支持細胞をかこんで少くとも6つ,ときにはそれ以上の嗅細胞が存在するようになっている(図599).

 末梢がわの突起はその自由端に嗅小毛Riechhärchenという短くて細い原線維性の総をつけている(図598).

これは長さ約2µの繊細な小毛で,先がとがっており,6~8本あって多くのばあいやや放射状に散開している.小毛が直接に付着している細胞の部分は,薬品で処理した標本では,大きさのいろいろなボタン状のふくらみを示すが,この部分が自然の状態でも嗅小毛の根ざす土台をなしているかどうかは,まだ確かでない.

[図599]家兎における嗅細胞の配列(G. Retzius,1900)

家兎の嗅粘膜の表面の一部.固有の上皮細胞の外表面のあいだに,嗅細胞の末梢端が黒い点をなしてならんでいる.左の方で嗅細胞が非常に数多く,右へかけて次第に少くなっている.

[図600]生後8日のハツカネズミの嗅粘膜から(v. Lenhossék)

a 嗅細胞,その下端で1本の嗅糸線維につづいている.b, c 自由神経終末.

2. 支持細胞Stützzellenは円柱細胞Zorlinderzellenともよばれ,その核は卵円形で,嗅細胞の円核帯の外方縁にあって,みな同じ高さに並んでいる.かくして楕円核帯Zone der owalen Kerneができているのである(図595, 597).細胞の末梢部は太くて,その下端のところに核がある.この末梢部には核より外方のところに帯黄色の色素顆粒がある.支持細胞は核のあるあたりから結合組織に達するまでの部分が細くて,しばしば圧平されており,嗅細胞を容れるへこみをもっていることが多い.支持細胞の基底がわの端はしばしば分岐し,鋸状をなし,かつ足板をもっている(図596).細胞のこの部分にも色素がある.細胞内に縦の方向に1本の支持原線維Stützfibrilleが通っている.

 嗅細胞の細胞体は,ところどころで楕円核帯より外方にのび出ているものがあり,このような嗅細胞の末梢がおの突起は非常に短いのである.この種の嗅細胞は異型atypische Formとよばれる.これはDogielが魚類と両棲類で記載してRiechzapfen(嗅栓)とよんだ構造物を思いおこさせる.

3. 補充細胞Ersatzzellenあるいは基底細胞Basalzellenとよばれるものは上皮の結合組織に対する境のところにあって,大体において円錐状であるが,突起をもって細胞間橋をつくってたがいにつながり合い,原形質性の網を形成している.

 哺乳動物では上皮の自由表面が嗅境界膜Membrana limitans olfactoriaとよばれるクチクラ性のうすい膜をもっている.この膜には嗅細胞の末梢がわの突起の1ずつに対して小さい孔があいている.つまりこの孔から突起が表面に顔を出しているわけである.しかし支持細胞はこの膜にすっかり被われている.

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最終更新日13/02/03

 

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