Rauber Kopsch Band2.585   

 角膜頂(角膜の前面の中央)から水晶体の前面までの距離は4mmである.そのうち3mmは前眼房の奥ゆきに相当する.水晶体の前後軸も4mmである.水晶体から網膜までの距離は14.5mmで,後極における3つの眼球膜の厚さは合計2mmである.--両眼間の距離は56~61mmである.(日本人の瞳孔間距離は足利によれば58~61mm,小松(日眼会誌47,1943)によれば成人男子63,女子61mmである.)--眼球の重さは6.3から8grのあいだであって,体積は6 cm3である.比重は1022~1030である.(日本人の正常な眼球の重さは5.6~9.3gr,平均男7.52gr,女7.17 gr.容積は男7.31 cm3 ・女7・05 cm3・比重は1.026である.(越智貞見,目眼会誌21巻3号,1917))新生児ではL. Weissの計測によると平均2290mgで,体積は2189mm3であった.Sappeyによれば女の眼球の直径は男にくらべてやや小さいというが,この差異ははなはだ不顕著であるか,あるいは全く差異がないのである.なかでも角膜の弯曲および大きさの点は男女両性間で同じか,あるいはほとんど同じである.新生児の眼球軸は17.5mmである.子供の眼は生後の第1年で少なからず発育する.その後は思春期にいたるまで,ごくわずかの増加しかない,そして思春期から速かに最終的な大きさに達する.角膜はすでに生後第3年には終局的の大きさに達している.

1. 眼球外膜Tunica externa oculi

 すでに述べたように角膜と強膜からなる.

a) 角膜Cornea, Hornhaut(図605, 607611)

 角膜は眼球外膜のおよそ1/5をなすもので,前面は凸で外面Facies externaとよばれ,後面は凹で内面Facies internaとよばれる.前面の中央部は角膜頂Vertex corneae, Hornhautscheitelである.

 角膜の辺縁は角膜縁Limbus corneaeとよばれ,ここで角膜の透明な組織が白い強膜に直接移行する.強膜はその外層がいくらか角膜の上にかぶさつており,ときには強膜の内層も伸びだしていることがある,このような場合には強膜にSklerafalz(Falzは板の縁のはめこみ溝)という溝が生じて,腕時計のガラスをおさえる蓋の溝のように,角膜をはめこんでいる.

 強膜の外層はとくに上方と下方で伸びだしているので,角膜と強膜の境界線は横におかれた楕円の形となり,その水平径は11.9mm,鉛直径は11 mmである(HelmholtzとKnapp).(越智によれば日本人では水平径11.52mm,鉛直径10.54 mmである.)同じ著者たちによれば角膜の外面の弯曲も楕円体面である.水平の経線は鉛直の経線よりも弯曲がすこし弱くなっている(Donders).また後面で,は前面より弯曲がいくらか強い.それで角膜の中央では厚さが0.8mmであるのに角膜縁では1.1mmになっている.角膜の重さは180 mgである.(Huschke).

 角膜にば次の層がある(図607):a)角膜上皮Epithelium corneae, b)外境界板Lamina limitans externa, c)角膜固有質Substantia propria corneae, d)内境界板Lamina limitans interna, e)前眼房内皮Endothelium camerae anterlorls.

 a)角膜上皮Hornhautepithelは重層扁平上皮で,5層の細胞からなり(H. Virchow),全体の厚さは50~l00µである(図608).

 Virchowは角膜の全表面にわたって,すなわち角膜縁の上皮に移行するところまで,上皮の厚さが同じであることを見た.

 最深層は円柱状の細胞で,その底は線条のある縁(足板)をもち,小さいギザギザがついていて,これが外境界膜にかみあっている(Langerhans).円柱細胞の上には多角形の小さい有棘細胞からなる2層がある.表面の2層は圧平された細胞で,角化することがなくて,核を保っている(図608, 609).上皮細胞間迷路の中にはしばしば少数の遊走細胞が周囲に適応した形をして存在している.最下細胞層では有糸分裂が規則正しく起り,表面から剥離してゆく上皮の再生はこの層から行われる.(日本人では33例中15例において角膜上皮細胞内に微細な色素顆粒がみとめられ,その多くは基底層に,まれには表層の細胞にもある.(松岡秀夫,日眼会誌36巻10号,1932))

b)外境界膜äußere Grenzhaut(ボウマン膜Bowmansche Haut)は厚さ20µのガラスのように透明な層で,角膜縁にむかつて急に消失している.過マンガン酸カリによって,この層が原線維からできていることがしめされるが,これは弾性線維ではない.H. Virchowによれば,この層は角膜固有質と同一物質でできていることが疑いない.角膜上皮にいたる神経はこの層を通りぬける.

c)角膜固有質Substantia propria(図607)は原線維性の基質と,その中にある細胞とからなる.

S.585   

最終更新日13/02/03

 

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