Rauber Kopsch Band2.586   

膠原原線維が接合質Kittsubstanzによって厚さ8~10µの扁平な層板Lamellenにまとめられ,それが50~65枚かさなりあっている.

 それぞれの層板が角膜の全域を被っているのではなくて,いろいろな方向にたがいに交叉する数多くの層板が隣りあっているのである.さらにまた相異なる層の層板はたがいに完全に分れているのでなくて,非常に鋭い角度で交織しあっている.原線維束はそれぞれの層板のなかで,角膜の表面に平行する面上で,あらゆる方向に走っている.

 角膜の前面に近い所では,原線維束が深層のものより繊細になっており,深層からの原線維群によって,斜めの方向,あるいはかなりしばしばほとんど垂直の方向に貫かれている.これがボウマンの支持線維Bowmansche Stützfasern とよばれるもので外境界膜のところで消失している.

 交織する原線維の層板のあいだには,豊富な液細管系Saftkanalsystemが発達している.この体液路系がふくむものは透明な液体と2種の細胞--角膜細胞Hornhautxellen(結合組織の固定細胞に相当する,図610)と遊走細胞Wanderzellen(リンパ球)である.

 角膜細胞は液腔の一方の壁に密接して存在するので,内皮細胞の状態を呈している.比較的大きい液間隙では2~3個の扁平な細胞が,辺縁を相接して並んでいることが稀でない.酸やその他の薬品で晒すことによって,一方のがわに細胞のついた嚢を遊離させることもできる.これは角膜小体Hornhautkörperchenとよばれ,弾性をもった液腔壁の層と,その1側に付いている角膜細胞とからなる.遊走細胞は固有質のなかに必ず存在するが,その数は不定である.

d)内境界板innere Grenzhaut(デスメ膜Descementsche Haut(図607)は新鮮な状態では無構造にみえ,特別な構造を示さない非常にうすい層板の集りであって,この層板は(たとえば10%NaClで)分離することができる.内境界板は中央でもっとも薄く,辺縁にむかつて厚くなり,機能的には毛様体筋の中心腱Zentralsehneとみなされる.

 内境界膜はケルカリや酸や熱湯に対して強い抵抗力をもっており,外境界膜よりも容易に固有質から剥離できる.そしてはがれると前方ヘクルクルと巻いてしまう.

e)前眼房の内皮Endothelium camerae anterioris(図607)は,接合質と細胞間橋によって結合されている扁平な結合組織細胞の単一の層からなる.核はたいてい中央にあり,球形あるいは楕円体の形で,これを囲む細胞体の部分とともに前眼房に突出している.

 角膜の血管とリンパ管:角膜は血管を欠くが,その辺縁の小部分だけは例外で,ここには上皮と固有質のあいだに1層の疎性結合組織がはいりこんでいて,そのなかに血管が毛細血管のワナの形でふくまれる.このワナを角膜のRandschlingennetz(辺縁係蹄網)という.まれには少数の血管係蹄が角膜の辺縁部で固有質のなかまではいりこんでいる.

[図608]ヒトの角膜上皮の横断(×500)

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最終更新日13/02/03

 

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