Rauber Kopsch Band2.590   

2. 眼球中膜Tunica media oculi(図605)

 眼球中膜は境界の明瞭な3つの部分からなり,それらが前後にならぶ3つの帯をなしている.すなわち脈絡膜Chorioidesと毛様体Corpus ciliareと虹彩Irisであって,前2者はまた広義の脈絡膜とよばれる.

a) 脈絡膜Chorioides, Aderhaut(図612615)

 これは暗赤褐色を呈する膜状の被いで,血管と色素を多量にふくみ,厚さは0.05~0.08mmである. Mörike(1949)によれば眼球後極のところで0.22mm,黄斑のところで0.26mmの厚さである.脈絡膜は視神経の侵入部から鋸状縁Ora serrataにまでのび,ここでいつのまにか毛様体に移行している.視神経の侵入部では脈絡膜にまん円い穴があいており,かつここでは脈絡膜が強膜としっかりと結合している.脈絡膜の内面は平滑であるが,外面は強膜をはがしてみると,脈絡外層Stratum perichorioideumという疎な性質の組織があるために,けばだっている.この疎な組織はたがいにつながりあう多数の腔所を囲み,脈絡膜と強膜とを結合している.この両膜のあいだはたやすくはがれるが,黄斑のところではその結合がいくらか固くなっている.強膜と脈絡膜のあいだにある腔所の系統は眼のリンパ路に属するもので,脈絡外隙Spatium perichorioideum, Perichorioidalraumとよばれる.

 脈絡膜には次の4層がある(図615):

1. 脈絡外層はたがいに鋭角をなして結合する多数の層板Lamellenからなり,横断面でみるとこの層板の数は5~6層である.これらの層板のあいだに上述の脈絡外隙がある.このような層板の各々は弾性線維の網でできており,色素をもつ多数の扁平な結合組織細胞が,散在ないし集団的に,この網にくつづいている.層板の1側または両側が内皮細胞で被われている.

 脈絡外隙を貫いて走るものは,毛様体神経Nn. ciliares(15~18本),虹彩動脈Aq. iridis(2本),脈絡膜動脈Aa. chorioideae(約20本)のほか,赤道部では渦静脈Venae vorticosae(ふつう4本)がある.

2. 血管板Lamina vasculosa(図615)は脈絡膜固有の動静脈の多くの枝が,色素細胞と弾性線維をまじえる結合組織の層板の密にかさなって交織したものによって結合されて,全体として緻密な組織となっているのである.最も目だつのは静脈の枝分れの状態である.すなわち脈絡膜・毛様体・虹彩からの血液を集めるかなり太い静脈が,ほぼ眼球の赤道部で,たがいに90°のへだたりをもつ4個所に集合するのがふつうである.これらの静脈は四方八方から放射状に集合血管に注ぎこみ,かくして4個所にそれぞれ渦静脈V. vorticosa, Wirbelveneを形成するのである.そして相隣る渦静脈の枝は,眼球の後部で弓状につながり合っている.

 しかし静脈の集合部ほ必ずしも90°ごとの位置にはなくて,ごく接近していることもあって,そのような場合には1つの渦静脈が重複しているようにみえることもあれば,ついには2つが合して1個の渦静脈になっていることさえある.あるいは両者の距離がいっそうはなれているときには5ないし6個の渦静脈が現われることもある.渦静脈の幹はまず脈絡外隙を,ついで強膜を貫く.--脈絡膜の静脈は血管周囲鞘でつつまれているので,この鞘と血管壁のあいだにリンパ腔がある.--眼球の前部(鋸状縁から赤道まで)では禍静賑の枝が血管板の表層を占めるが,眼球の後部では脈絡膜動脈Aa. chorioideaeがそれより表層にある.脈絡膜動脈はその大部分が視神経の外側で眼球内にはいるが,少数のものは内側からはいる.脈絡膜動脈はすべて脈絡膜の毛細管網に移行する(図613).--脈絡膜の動脈ははっきりした輪走筋をもち,なおまたその両側に縦走する平滑筋束がある.側方の縦走線維束はしばしば眼球の後部で,平滑筋線維の網によってつながりあっている.この限りにおいて,脈絡膜の筋性成分というものを考えることは当を得ている.鳥類では脈絡膜の後部に横紋筋線維の網があって,これは脈絡膜筋Musculus chorioideaeとよばれる.

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最終更新日13/02/03

 

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