Rauber Kopsch Band2.595   

3. 毛様体筋Musculus ciliaris, Ciliarmuskelは横断面では三角形を呈する平滑筋束で,毛様体の外面に位置をしめ,全体として輪状をなして,毛様体冠と,毛様体輪のこれに接する部分とを被っている.毛様体筋じしんは外方で疎な性質の脈絡外組織,および角膜と境を接している.その脈絡外組織のなかを虹彩動脈が前方へ走り,2つの枝に分れてこれらがたがいに離開し,両枝は毛様体筋にはいり,それを貫いて毛様体筋の前縁および虹彩に達する(図612, 613).

 毛様体筋は緻密な平滑筋ではなくて,とくにその深部では筋線維束が網状を呈し,その網の目は内方では円く,外方ではかなり引きのばされた形になっている.その隙間を結合組織が充たしている(図623).毛様体筋には次の3部分がある:経線の方向に走る部分,放射状に走る部分,輪状に走る部分.

 経線状線維Fibrae meridionales(Brueckii)は外層をなして,強膜と角膜の境のところから毛様体輪の領域にまでのびている.この線維群および以下に述べるものの一部は,強膜静脈洞の内側の核に富む組織(これは角膜の内境界板につナく)ならびに内境界板そのものから起こっている.それゆえ内境界板は特殊な中心腱Zentralsehneであると考えることができる.

 経線状線維の内方につづく線維束は,純粋な経線状の走向をやめて,だんだんと放射状の走向をとるようになる.これが放線状線維Fibrae radialesであって,毛様体筋の内面の方に向かっている.そして内面に達すると,赤道方向に走行を変えて輪走するようになる.

 ところが毛様体筋の前内方の隅のところにある線維束すなわち輪状線維Fibrae circulares(Muelleri)は,はじめから輪状の走向をもっていて,これはミュレルの輪状筋Müllerscher Ringmuskelともよばれる.ちなみに毛様体筋のその他の2部分は合わせて脈絡膜張筋M. tensor chorioideaeまたはブリュッケ筋Brückescher Mushelとよばれる.

 個体差が時としてみられる.とくに輪状線維はしばしば近視眼の人で発達がよわいが,これに反して遠視眼の人ではつよく発達している.年令差性差をR. Stieve(1949)が報告している.それによると毛様体は15才になって初めて完全な発達をみる.そして35~50才からは,毛様体筋のうち経線状線維の大部分が衰退しはじめ,これに反して輪走の部分には新しい筋線維が生ずる.55才をすぎると毛様体筋はすべての部分が退化してゆく.男女間のちがいは60才以後になって初めてあらわれる.

 毛様体筋の血管は虹彩動脈Aa, iridisおよび毛様体小枝Ramuli ciliaresから来る.また神経は毛様体神経から来て毛様体筋にはいり,ここで神経細胞をふくむ神経叢をつくっている.この神経叢からは内方へ虹彩の神経が,外方へは角膜の神経が出ている(457,  458頁参照).

 の毛様体筋はクランプトン筋M. Cramptonianusとよばれ,非常につよく発達しており,しかも横紋筋でできている.

c)虹彩Iris, Regenbogenhaut(図605, 616, 619, 621624)

 虹彩は眼球中膜の前の方の部分で,前額面上にあり,眼房内に露出した円板であって,その中央に円い孔があいている.これが瞳孔Pupilla, Sehlochであり,この孔を通って光線が眼のなかに達する.瞳孔は虹彩の中央より少し内側によっている.生体の眼では瞳孔の直径は3~6mmで,この大きさは入ってくる光線,眼の調節の状態,その他の影響で変る.瞳孔は角膜の後方で水晶体の前にあり,角膜と水晶体のあいだにある腔所を大きい前方部と小さい後方部とに分けている.これが前眼房後眼房である.虹彩の瞳孔に近い部分は水晶体の前面に直接ふれているので(この接触部分の範囲は広いことも狭いこともある),両眼房はそのためたがいに分離している(図605).

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最終更新日13/02/03

 

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