Rauber Kopsch Band2.599   

 結合組織線維(膠原線維とごく少量の弾性線維)は主として血管(動脈・静脈)と神経のまわりで,強い外膜層をなして集まっている.輪走する線維はまれで,たいていの線維が血管の走向に平行している.血管外膜の表面には支質の細胞があって,これはたいてい紡錘形をしている.血管や神経のあいだの場所は疎性結合組織で充たされている.筋線維はない.なお褐色の虹彩では,そのほかに色素細胞がある.これは褐色の粒子でみたされた塊状の細胞で,大きさはまちまちである.この細胞は小虹彩輪のところに最も多い.

 瞳孔括約筋M. sphincter pupillae(図623)は輪状の筋板で,その厚さは40~80µ,幅は1mmである.小虹彩輪に存在するが,それも虹彩支質の後面に比較的近いところにある.括約筋をなしている平滑筋束は瞳孔をとり囲んで,瞳孔縁のすぐきわまで達している.括約筋のうしろには1層の結合組織があって,ここには放射状の断面では斜走する線維構造がみられ,これが括約筋の筋束のあいだの結合組織索とつながっている.またこの結合組織索に接して放射状の走向をとる筋束が,バラバラに少しばかり存在し,たがいに交織して瞳孔の方へ走りながら括約筋に移行している.これは瞳孔散大筋の一部である(図621, 622).

 瞳孔散大筋M. dilatator pupillaeの層すなわち散大筋層Dilatatorschichtはガラスのように透明な厚さ2µの膜をなして,虹彩の全体にひろがっており,その後面に虹彩色素上皮層Stratum pigmenti iridisが接している.散大筋層は放射状に走る平滑筋線維からできている.小虹彩輪の領域では,前述の放射状の平滑筋束が,ところどころで散大筋層の前面に合している(図622, 624).

 虹彩の後面は暗い色素をもった2層の細胞で被おれている.2層のうち前方のものは虹彩色素上皮層,後方のものは網膜虹彩部Pars iridica retinaeである(図624).両者は瞳孔縁でたがいに移行している.

 虹彩の神経は毛様体筋の実質の中およびその外面に存在する毛様体神経叢iPlexus ciliarisから起こっている.虹彩内にはいった神経の小幹(その一部は有髄性)は虹彩支質の前方部に1つあるいは2つの輪状の神経叢をつくる.そのうち瞳孔括約筋のすぐ近くにある神経叢は最も規則正しくみられる.すべての有髄線維は次第に髄鞘を失う.大部分の線維は瞳孔括約筋に分布するのであって,これらが括約筋の実質中に,細くて色のうすい軸索からなる叢をなしている.残りの神経線維は散大筋および血管にゆく.

 虹彩の血管については 613,  615頁の眼球の血管の項をみられたい.

3. 視神経Fasciculus opticus(図605, 625, 626)

 視神経Augenstielは以前に視神経N. opticus, Sehnervとよばれたもので,視神経交叉Chiasma fasciculorum opticorumからはじまって,蝶形骨の視神経管Canalis fasciculi opticiを通って眼窩にあらわれ,そのなかを進んで眼球に達する.眼窩内での視神経の走りかたは直線的ではなくて,S状にまがっている.すなわち後半部は下外側に凸,前半部は外側に凹をむけて弓状にまがっている.

 視神経は眼窩の内部で視神経鞘Vagina fasciculi opticiという脳膜のつづきに包まれている.すなわち視神経は硬膜の鞘Durascheideである外鞘Vagina externaと,クモ膜と柔膜の鞘Arachnoides-Piascheideである内鞘Vagina interna,およびそれらが境するリンパ腔によって包まれている.外鞘と内鞘のあいだのリンパ腔は鞘間隙Spatium intervaginaleとよばれ,クモ膜のうすいつづきによって,外方の狭い部分と内方の広い部分とに分れている.丈夫な小梁がクモ膜鞘を硬膜鞘に結びつけている.また小梁の網がクモ膜鞘と柔膜鞘のあいだに張られている(図605, 626).

 視神経の硬膜鞘は眼球壁へ移行し,強膜の外方2/3の層につづいている.柔膜鞘は大部分が強膜の内方1/3の層に移行する.その移行部で鞘間隙は細くとがって終わっているのが普通である(図605, 626).

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最終更新日13/02/03

 

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