Rauber Kopsch Band2.600   

 視神経の全周および全長にわたって,柔膜鞘の内面から多数の小梁が分れて出て視神経の内部に侵入し,これらが網状に結合して800ばかりの小さい鞘をつくっている.その鞘のなかに視神経の神経線維が束をなしておさまっているのである.

 視神経の前方部はまた2つの重要な血管をもっている.それは網膜中心動脈静脈A. et V. centrales retinaeで,たいてい眼球から15~20mm離れたところで,視神経の下内側の4半分から,柔膜鞘の一部に被われながら視東内に侵入し,その中軸部に達する.この柔膜の被いは視神経の中心結合組織索zentraler Bindegezvebsstrangをなすもので(図625, 626),前にのべた視神経の小梁とその網が,この中心索につづいているのである.視神経が強膜にはいるところでは,これらの結合組織小梁は太くなって数を増し,大部分が横走するようになる.それでこの部分を横断してみると,穴のあいた結合組織板がフルイをみるような印象をあたえる.これが強膜篩状野Area cribriformis scleraeであって,強膜の縁から中心結合組織索までのびている.そのほか近くの脈絡膜からも繊細な小梁が視神経にはいっている(図626).

 視神経の線維は強膜篩状野までは有髄で,直径は平均2µである.もっと細いものも多数まじっているが,また5~10µの太い線維もある.線維の数を決定することはむつかしいが,およそ500,000本である.視神経は中枢神経の一部なので,シュワン鞘のかわりにグリアNeurogliaが存在する.篩状野のところでは神経線維が髄鞘を失って,無髄の状態で眼球内に達する.それゆえ視神経の太さは, 図605626に見られるように,この場所でいちじるしく細くなる.

 変異:ときどき視神経線維の髄鞘が,ある距離だけ眼球内へのびていることがある.

 神経:硬膜鞘には多数の神経線維があって,その神経線維束はたがいに吻合して,ところどころにはっきりした網の目をつくっている.柔膜鞘にも,神経線維がその血管にはわずかに,結合組織には豊富に来ている.すなわち血管には内頚動脈神経叢から,結合組織には動眼神経から神経が来ているのである.Ph. Stöhr, Anat. Anz., 55. Bd.,1922.

4. 色素上皮層Stratum Pigmenti, Pigmentepithel(図615, 620, 623, 624, 627, 628)

 色素上皮層は視神経の侵入部から虹彩の瞳孔縁までのびる単層の上皮である.それが瞳孔縁のところで折れかえって,網膜の虹彩部につづいている.眼球中膜の3部分に対応して,色素上皮層も部位によって3つの部分に分けられている.

α)網膜色素上皮層Stratum pigmenti retinaeは色素をもつ単層の上皮細胞からなる.この層が広がる面上を見ると,おのおのの上皮細胞は多角形で,核以外の細胞体の部分は色素粒子でみたされ,隣りの細胞とは明るい線条でわけられている(図627).細胞はたいてい6角の柱状で,いっそう稀には4~5角や,7~9角の柱である.なお細胞の底面は直径が12~18µである.最も大きい細胞は網膜色素上皮の辺縁のところにある.側方から,ないしは断面でみると,この細胞が小棒をもつ上皮Stäbchenepithelienに属し,かなりの高さをもっていることぶわかる(図628).細胞の基底部すなわち脈絡膜に接する部分には色素がない.細胞体のこれにつづく部分との境のところに,楕円形の明るい核がある.さらにこれにつづく部分は色素をたくさん含んでいて,ここから色素をもった多数の細い突起(小棒とか,「まつ毛のような糸状突起」と形容できる)がでて,網膜の杆状体や錐状体のあいだを外境界層の近くにまでのびている.色素粒子は長くのびて棒状を呈し,1~5µの長さである.色素(フスチンFuscinとよばれる)は褐色で,水・アルコール・エーテルに溶けない.この色素は酸素の存在下で光によって色があせる.光が作用すると多数の色素粒子が前述の小棒をつたわって網膜の外境界層にまで移動する.しかし暗所では,これらの粒子はまた細胞体へもどってくる.

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最終更新日13/02/03

 

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