Rauber Kopsch Band2.604   

ところが外境界膜じしんがまたその表面から多数の細い突起を杆状偉や錐状体の基底部のあいだへ送りだしている.これがいわゆるFaserkörbe(線維のかご)である.内顆粒層では各放線線維(つまりこれはグリア細胞に他ならない)が1つの核をもっている.放線線維は網膜の中央部より周辺部でいっそう密集しており,黄斑のところでは痕跡的な形成を示しているにすぎない.

 これで網膜の構成についての概観が得られたので,次にはそれぞれの層の特色をもっとくわしく述べることにしよう.黄斑はかなり変つた構造をしているので,網膜の全体を広い黄斑外周部と小さい黄斑部とに分けて扱かうことにする.

a)網膜の黄斑外周部Perimakulares Gebiet

1. 神経線維層Nervenfaserschicht:これは軸索の束からなり,それがグリア細胞によってまとめられている層である.個々の軸索束はたがいに叢状の多数の結合をしている(図633).乳頭より内側ではこの叢が純粋に放射状(経線状)にひろがるが,外側の半分では黄斑がそのような配列を乱す因となっている.乳頭と黄斑のあいだの場所を走る束は黄斑束Maculabündet(日本解剖学会制定の用語では乳頭黄斑束)とよばれ,非常に細くて,乳頭から黄斑へ一部は直線的に走っている.その上方と下方に接する束は,まず放射状に走るが,じきに方向を変えて,上方のものは下方へ,下方のものは上方へむかう.そのさい黄斑束に隣る束は豊富に叢をつくりながら,弓状をなして結合する.残りの束は次第にまた放射状に方向をまげる,中心窩から4mm外側にある小さい1つの三角形をしたところは黄斑傍三角Trigonum paramaculareとよばれ,3つの方向からの線維束が相会するために生じたものである.中心窩においては神経線維層がほぼ完全に欠けている.またこの層は鋸状縁に近づくにつれて次第に束が細くなって,鋸状縁ではこれがなくなっている.

2. 神経細胞層Gqnglienzellenschicht(図630, 631, 634):この層は網膜の大部分のところで単層であるが,黄斑の近くでは2層である.黄斑の内部では8~10層もあるが,中心窩へおちこむ傾斜のところでこの層の神経細胞が次第に減り,中心窩の底では完全になくなっている(図631).中心窩のまわりで神経細胞が土手のようにうず高く集まっていることと,中心窩の底で球少していることとは,関連がある.網膜の周辺部では神経細胞の相互の隔たりが大きくなり,鋸状縁のあたりではところどころに散在するのみとなる.神経細胞は多極性のもので,直径は10~30µあり,神経突起を神経線維層に送り,1本またはそれ以上の樹状突起を内網状層に送っている.

[図631]ヒトの中心窩を通る断面

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最終更新日13/02/03

 

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