Rauber Kopsch Band2.605   

3. 内網状層innere retikutdre Schicht(図630, 631, 634):弱拡大ではこの層が細かい顆粒状にみえるので,またの名をinnere granulierte Schicht(内顆粒層)またはinnere molekulare Schicht(内分子層)という.この層はいろいろな種類の神経細胞の樹状突起と神経突起とがつくる豊富な枝分れからできている(図634).この層じしんに属する神経細胞はまれではあるが,本当の神経細胞がところどころに散在して,主として水平方向にその突起をのばしている.この層の厚さは網膜の大部分の場所で40µ,鋸状縁のところでは30~35µである.

 内網状層にはその外方の境界からも原線維のふさ状の群がはいってきて,内方の境界からはいってくる原線維のふさ状の群(これは神経細胞層からくる)が達するのと同じ階層にまで至つている.つまり両方の原線維の群が反対の方向からやってきて,内網状層のいろいろの深さのところで相会するわけで,その様子は2つの異なった方向からきて接しあう樹木の梢に似ている.

4. 内顆粒層innere Ktirnerschicht(図630, 634):双極性の神経細胞を主体とする層で,この細胞がいくつかの層をなしている.その最深層はSpongioblastenschicht(海綿芽細胞層)であって,この層の細胞はとくによく色素をとり,突起は1本しかださない.それでこの細胞はアマクリン細胞amakrine Zellenともよばれる.(µaχρος(長いもの)を欠く細胞の意である.日本解剖学会制定用語の無軸索突起はあまり適訳でないと考える.(小川鼎三))その突起はすでに述べたように内網状層にはいり,そこで原線維のふさ状の群をつくっている.

 そのほかの細胞は双極性細胞Bipotarzellenであって,相対する両極からそれぞれ1本の突起がでている.そのうち外方の突起は,となりの外網状層のなかで原線維のふさをなして終わっている.また内方の突起は内網状層にはいっていって,また注目に価する現象をしめすのである.すなわちその終末小枝が内網状層内のいろいろ異なった階層に発達して,神経細胞層の細胞の細胞体や樹状突起の枝と接触している.これらの双極性神経細胞はすべて細胞体の発達がはなはだ貧弱であるため,核のある部分が強くふくらんでいる.さらに内顆粒層には,中心性の遠隔細胞zentrale Fernzellenからの軸索がここを貫いており,またその終末小枝もみられ,なおまたミユレル支持線維の核をもつ部分もこの層に在存するのである.

5. 外網状層äußere retikuläre Schicht(顆粒間層Zwischenkörnerschicht) (図630, 631, 635):これは一見して顆粒状の物質からなる薄い層であって,3に述べた層と同様に神経細胞のはなはだ豊富な枝(おそらくその一部はまたグリア細胞のものであろう)が主体をなしている.神経細胞の枝としては,ここには4に述べた層の双極性細胞から外方に伸びる無数の終末小枝がきている.さらに神経上皮層の細胞から内方へ伸びてきたものの終末がある.

 この層にはそのほかに中心性の遠隔細胞zentrale Fernzellenからの終末小枝がある.最後にこの層には水平細胞Horizontalzellen(図360)という固有の細胞がたくさんあって,その終末分枝は水平の方向にひろがり,それがつくる原線維の水平方向のふさには,外層のものと内層のものとが区別できるのである.

[図632]網膜の放線線維をクローム銀染色によってしめす ネコ(G. Retzus 1894)

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最終更新日13/02/03

 

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