Rauber Kopsch Band2.607   

杆状体粒は,長さ6~7µの楕円形で横縞をもった核の部分だけからできているといえる.杆状体粒の両極は常に暗い色調の物質によって占められ,明るい縞は1本のここともあればそれ以上のこともあり,弓状にまがっていることもある.

 杆状体の内節は外境界膜によって杆状体線維から分離されているわけでは決してなくて,この境界膜に杆状体と錐状体の数だけの孔があいていて,この孔をとおして細胞の両部分がたがいにつながっているのである.

β)錐状体視細胞Zapfen-Sehzellen, Farbenzellen(色の細胞) (図629, 630, 635):これは錐状体Zapfenと錐状体線維Zapfenfaserと錐状体粒Zapfenkornとからなっている.

 錐状体は光を強く屈折する外節Außenglied(錐状体小棒Zapfenstäbchen)と,色のうすくて柔かな内節Innenglied(錐状体の体部Zapfenkörper)とをもっている.外節は円錐形で柞状体の軽節よりも短くて,視紅をもっていない.内節は太さが6~7µで,円みをもってふくらんでおり,杆状体の内節ほど外方へ達していない.内節の外方部には錐状体の楕円体Zapfen-Ellipsoidがあって,これはヒトでは杆状体の糸状装置とその性状が似ていて,錐状体の内節の大部分を占めている.錐状体の外節は積みかさなった小円盤からできており,また角質(ケラチン)の被いで包まれている.

 ヒトでは網膜の大部分の場所において,最も近い2つの錐状体のあいだを結ぶ線の上に3つか4つの杆状体が存在する.しかし黄斑の近くでは錐状体が密に集まってくるので,錐状体の1つ1つが杆状体の1列の環によって囲まれるようになる.さらに黄斑じしんのところでは錐状体だけしか存在しない.錐状体の総数はヒトの網膜では約3, 360,000であり,視神経の線維の数をはるかに越えている.また杆状体の数は75,000,000と見積られている.

 錐状体粒は黄斑を除いてはどこでも,外境界膜(この膜にやはりそれぞれの錐状体細胞に相当して孔があいている)のすぐそばにある.錐状体粒の核は大きくて楕円に近い形であり,横縞はなくて,核小体を1つもっている.この粒から出る錐状体線維は比較的太くて維のすじがはいっている.この線維は旅射状に内方へ走り,微細な線維をもった円錐状の付着部によって外網状層に固着している.

 錐状体粒杆状体粒とがいっしょに外顆粒層をつくっている.この層の厚さはヒトでは50~60µであって,その中で錐状体粒は外方の層を占めている.

鋸状縁の領域(図605)

 網膜の視部Pars opticaから毛様体部Pars ciliarisへ移行するところ,すなわち鋸状縁Ora serrataで網膜の厚さが急に減ずる.およそ45°の急傾斜でうすくなる.もっとも鋸状縁の後方ですでにいくつかの層が消失して,網膜の厚さが減じているのである.そのさい視神経線維と神経細胞がまずまばらになり,ついには全くなくなってしまう.視細胞のうち杆状体視細胞が早く消失するのに対して,錐状体視細胞の方はなお存在しているが,しかし退化的な形をあらわしている.次いで外網状層がなくなり,そのために内外の顆粒層が合することになる.しまいに内網状層もまた終りとなる.これらとは逆に豊富になるのがミュレルの支持線維であって,そのために視部の最外方の縁のところは,ほかのところよりいっそう丈夫な作りになっている.

[図635]杆状体視網胞と錐状体視細胞 模型図(M. Schultze)×700

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最終更新日13/02/03

 

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