Rauber Kopsch Band2.608   

b)網膜の黄斑部makulares Gebiet(図631)

 黄斑の黄色い色調は,この部の網膜では視細胞よりびまん前にあるすべての諸層に黄色い色素が瀰漫しているためである.この色素は視細胞には欠けており,またそれゆえ中心窩の底にはない.

 黄斑の周辺部が厚くなっているのは,主として神経細胞が著しく増加して密集していることによる.しかしそこから中心窩の底へ向かってまず神経線維層がなくなり,ついで神経細胞層と内網状層, 最後に内顆粒層と外網状層とが消失する,したがって中心窩の底には視細胞性の成分だけ一しかも錐状体視細胞だけしか存在しないのである.とはいっても細かい網状を呈するごく薄い1層が錐状体線維の層を被ってなお存在している.これは内外の両網状層の残りものに相当するのである.

 中心窩Fovea centralisは卵円形で,水平方向には0.2~0.4mmあるが,鉛直方向には0.15mmしかない.中心窩のいちばん深い底には錐状体粒の1層があるだけで,ここでは網膜の厚さが80µしかない.

 錐状体は黄斑のところで次のように形が変る.その内節がはじめはまだ4~5µの太さをもっているのだが,まもなく長さ60~70µ,太さ2~2.5µという細長いかたちになる.この部分の血管を欠く範囲内に約13000個の錐状体がある.錐状体視細胞粒は外境界膜の内面にすぐ接していないで,12µ離れたところでやっとはじまる.またそれらは単一の層をなしていないで,3~4層に重なっている.また長い錐状体線維の走りかたが特徴的であって,これらは概して放射状に外方へのびて,周辺での連絡個所に達している.かくして外線維層äußere Faserschichtがよく発達しており,その厚さは170µにも達する.

網膜内および網膜から中枢神経系までの刺激伝導(図636)

 視線維は大部分が網膜の神経細胞層の細胞から起こっている.この神経細胞の神経突起が視神経の線維となって伸び出しているのである.しかし視線維の第2の部分は網膜外のところ すでに述べた諸中枢がら起こっている.このような中枢としてまず挙げられるものは四丘体の上丘・視床・外側膝状体・後頭葉の楔部の皮質である,最後の後頭葉の楔部皮質は第2次視覚中枢として,それより前に挙げた第1次の諸中枢に対立させられている(442,  443, 45t頁).

[図636]杆状体と錐状体から外側膝状体までの刺激伝導をしめす模型図(Cajal)

a 錐状体, b 杆状体, c, d 双趣性細胞, e 神経細胞,f 遠心性細胞,9 アマクリン細胞,h 網膜にはじまる神経線維の自由終末分枝, j この神経細胞の樹状突起がそこに到来する視覚刺激をうけとる.r 遠心性視神経線維の起始をなす細胞.

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最終更新日13/02/03

 

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