Rauber Kopsch Band2.614   

1. 網膜血管Vasa sanguinea retinae, Netzhautgefäße(図647).

 これは網膜中心動静脈A. et V. centrales retinaeの枝である.視神経はその柔膜鞘のなかに視神経を養う血管をもっている(鞘血管Scheidengefäße).網膜中心動静脈は眼球から15~20mm離れたところで視東内に入り(600頁参照),その中軸部をさらに進んで網膜の視部に分布する.

 この動脈と静脈はともに乳頭のところ,あるいはすでに視神経の中で2つの主枝に分れる.たいてい静脈の方が少し早く分岐する.両主枝は乳頭の表面でもう一度それぞれ2つの枝に分れるが,この分岐もすでに視神経の中で起こっていることがある.上下の両主枝から内側へそれぞれ1本--および下内側網膜動静脈Arteriola et Venula nasalis retinae superior, inferior,外側へもそれぞれおよび下外側網膜動静脈Arteriola et Venula temporalis retinae superior, inferiorがでるのである.内側のものは外側のものより短い.また内側の血管は放射状に鋸状縁の方へ走るが,外側の血管は黄斑に凹側を向けた弓をえがいている.なおそのほかに乳頭から2つの小さい動脈と静脈がでて,放射状に走って黄斑にいたる.これをおよび下黄班動静脈Arteriola et Venula macularis superior, inferiorという.

 乳頭の内側にもこれと同様の走り方をする2つの細い血管がたいてい存在し,内側網膜動静脈Arteriola et Venula retinae medialisとよばれる.黄斑には血管があるけれども,中心窩の底にはない.しかし中心窩の縁のところにはやはり血管がある.

 比較的大きい血管は神経線維層にあって,だいてい内境界膜に密接している.その枝は視細胞層にまでは達しないで,外網状層で終わっている.こう述べれば中心窩に血管がとぼしいわけは,おのずから明かであろう.網膜の動脈の枝はたがいに太い血管で連絡することがなく,毛細管で結合されているだけである.つまり終動脈Endarterienなのである.毛緬管は網膜の内方部では目のあらい網をなし,外方部では目の細かい網をなしている.外方の網は内方の網の付属物というような観を呈し,内方の毛細管網は網膜動脈の枝から直接に起こっている.内方の毛細管網から静脈がはじまる.動脈と静脈は外膜性の鞘でつつまれている.

 上に述べたところから,網膜の外方の主要層の全部すなわち視細胞層は血管を欠いている.この層は毛様体血管系から毛細管板Lamina capillariumを通じて栄養をうけるのである.

 網膜血管系は胎生期にいっそう広く発達していた血管の一部が永存した部分である.この血管系の一時的の部分は胎生期には硝子体を貫いて水晶体に栄養を送ることを役目としている.それが硝子体動脈A. hyaloideaであって,網膜中心動脈のつづきをなして視神経乳頭から水晶体に達している.この動脈枝は水晶体後面で枝分れしながら次第に水晶体の縁を越えてすすみ,水晶体前面に達する.そしてついには水晶体前面の瞳孔部さえもこの血管の分布範囲にはいってしまう.

[図647]ヒトの網膜の血管(E. JägerおよびLeber)

amとvmは黄斑動静脈,1 上外側網膜静脈,2 上内側網膜静脈,3 上外側網膜動脈,4 上内側網膜動脈,5 下内側網膜動脈,6 内側網膜動脈,7 内側網膜静脈,8 下内側網膜動脈,9 下外側網膜動脈,10 下外側網膜静脈,11 下内側網膜静脈.

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最終更新日13/02/03

 

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