Rauber Kopsch Band2.624   

涙丘Caruncula lacrimalis(図651, 657)

 涙丘の山腹の部分の上皮は眼瞼結膜の上皮と同じであるが,頂のところでは上皮網胞がさらにたくさん重なっており,またここには粘液細胞が群をなして存在する.皮下組織は小さいブドウ状の脂肪細胞群をふくんでいる.頂のところにごく小さい毛がはえていることがある.たとえこの小毛があってもなくても,脂腺がこ,ではかな殊良く発達している.また形の変つた糸球状腺や副涙腺の構造をした小さい腺もみられる.

眼球結膜Tunica conjunctiva bulbi(図605, 623, 652)

 眼球結膜は弾性線維に富む疎な性質の結合組織によって,ずれて移動しうるように強膜についている.乳頭はない.角膜の縁のところで上皮と角膜固有質とのあいだに1層の疎性結合組織がはいって来て,この層は角膜の外境界板が始まるところで終わっている(図623).角膜の縁にあるこの隆起の幅は上方と下方では1~1 1/2 mmであり,内側と外側ではわずか1/2~1mmである.そしてその中に 586頁で述べた角膜辺縁係蹄網Randschlingennetz der Hornhautがあり,またここにはたくさんの棍状小体がある.

 眼球結膜の上皮は眼瞼結膜の上皮にくちべるとその厚さも細胞層の数もいっそう大きいことが特徴である.その構造はすでに角膜上皮に似たところがあり,次第にうすくなって角膜上皮へ連続移行している.

 有色人種では眼球結膜の上皮が多少とも色素を含んでいる(Fischer).(日本人では全例に眼球結膜の色素沈着がみとめられる.松岡秀夫,308頁脚註参照.)ヨーロッパ人についても著者(Kopsch)は調査例数のおよそ1/3に,やはり斑紋状の色素沈着を確認することができた.いろいろな人種の眼の色素沈着についてはHauschildがまとめて報告している(Z. Morph. u. Anthrop.,12. Bd.,1909).

眼瞼の脈管と神経

 眼瞼の動脈内側眼瞼動脈Aa. palpebrales nasalesと外側眼瞼動脈Aa. palpebrales temporalesである.前者は眼動脈の前方部からたいてい1本の共通の小幹として起り,あるいはまた眼角動脈からも起る.後者は涙腺動脈の枝であって前者より細い.これらの動脈が上眼瞼動脈弓Arcus tarseus superiorと下瞼板動脈弓Arcus tarseus inferiorとをなしている.上下の両動脈弓は眼輪筋と眼瞼板のあいだで眼瞼縁から遠くないところを走っている(図652).上眼瞼には(より稀には下眼瞼にも),いっそう外方の第2の動脈弓が眼瞼板の外縁の近くにある.

 眼瞼の静脈は内側へは上および下眼瞼静脈Vv. palpebrales superiores, inferioresによって眼角静脈または眼静脈に注ぎ,外側へは浅側頭静脈に注いでいる(第I巻図681参照).

 眼瞼結膜には内側および外側眼瞼動脈から結膜小枝Ramuli conjunctivalesという枝が来ている.眼球結膜には毛様体小枝の結膜枝がきており,これは生体の眼でみることができる.角膜縁のところで毛様体小枝から角膜辺縁係蹄網(図648)が起る.

 結膜の静脈は結膜静脈Vv. conjunctivalesであって,眼瞼静脈および強膜上静脈Vv. episcleralesに注いでいる.

 リンパ路については第I巻図727を参照されたい.

 神経:涙腺神経N. lacrimalisは常に上下の両眼瞼に枝をあたえている.上眼瞼では涙腺神経の枝が前頭神経の外側枝R. lateralis n. frontalisの枝と交わりあっていて,そのために上眼瞼の一部はこの2つの神経によって同時に支配されるのである.さらに内眼角のところから眼窩下神経N. infraorbitalisの枝が上眼瞼にはいっている.

 頬骨顔面神経N. zygomaticofacialisも実際には眼瞼の神経支配にあずかるのである.滑車上神経N. supratrochlearisおよび滑車下神経N. infratrochlearisは内眼角のところで上下の両眼瞼の内側部へ枝をあたえている.

 眼瞼緑では乳頭のなかに多数の棍状小体Endkolbenがある.また眼瞼結膜の瞼板部ではそのひだの中に棍状小体があり,眼球結膜では粘膜固有層のなかにこれがある.どこでも棍状小体は表面近くにあって,球状ないし楕円形をしている.全く同様な棍状小体が角膜の血管のある領域(辺縁部)や眼球結膜にもある.これとは別に有髄の知覚神経線維のなかには,棍状小体に終らないで上皮内に自由終末をなしているものがある.そのほか無髄線維も結膜にあって,これはマイボーム腺および血管に分布している.

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最終更新日13/02/03

 

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