Rauber Kopsch Band2.625   

2. 涙器Organa lacrimalia, Tränenorgane

 涙器は涙Lacrimae, Tränenflüßigkeitを分泌する涙腺と,それを導くための排水路ともいうべきものからできている.涙腺は前頭骨の涙腺窩Fossa glandulae lacrimalisの中にある.排水路ははなはだ異なる2つの部分からなっている.その1つは外側部であって,涙腺の導管から先ず涙をうけとる結膜嚢とくにその円蓋である.涙は結膜円蓋を介して涙腺の領域から内眼角へと導かれる.第2は内側部であって涙点からはじまる.内眼角の涙湖に導かれた液体は涙点から吸いとられて,涙小管をへて涙嚢にはいる.涙嚢は下鼻道に開口する鼻涙管の上端部をなしている(図658).

a)涙腺 Glandula lacrimalis, Tränendrüse (図658, 660, 662)

 涙腺は上眼瞼挙筋のひろがった腱によって,大きさの異なる次の2部に不完全に分れている:

a)いっそう大きくて密集した上部-これを眼窩部Pars orbitalis という.

b)ゆるく結合された小葉からなる下部-眼瞼部Pars palpebralis,これは結膜円蓋の上にじかに接している(図662).

 眼窩部(上涙腺)には凸の上面と凹の下面のほか前縁と後縁がある.前縁は眼窩口縁に沿い,後縁は眼窩の奥ゆきの前部1/4のところに達している.矢状方向より横[の方向に長くて,前後には12mm,左右には20mmである.

 眼瞼部(下涙腺)は比較的ゆるく寄り集まった小葉をもっている.これらの小葉が結膜円蓋の外側部の上にあって,外眼角にまで伸びてきている.上涙腺が眼窩の上縁のうしろにかくれているのに対して,下涙腺は眼窩口縁の下に顔を出している.下涙腺は上眼瞼板の上縁に平行し,4~5mmの距離でそれから隔たっている.

 上涙腺には排出管Ductuli excretoriiとよばれる導管が3~5本ある.これらの導管は下涙腺の小葉のあいだを走って結膜円蓋に達し,ここで眼瞼板の縁から4~5 mmはなれたところで,たがいに不定な間隔を保って開口する.最も外側にある排出管が最大の口径をもち(0.45mm),外眼角を通る矢状面上にある.上涙腺の導管は下涙腺の中を通るときに,後者の小葉からの管をたくさんとり入れている.しかし下涙腺にはなお独自の導管が3~9本あって,これは不規則ながら,とくに上涙腺の導管の内側に配置されている.

 涙腺に属するものとしてさらに副涙腺Glandulae lacrimales accessoriaeと管状瞼板腺Glandulae tarseae tubulosaeがある.これは上に述べた涙腺と発生の由来をともにするばかりでなく,構造も同じである.両者についてはすでに 623頁に記した.

[図658]右側の涙器

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最終更新日13/02/03

 

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