Rauber Kopsch Band2.627   

 粘膜固有層は主として輪走する弾性線維網を豊富にふくむ結合組織からなる.上皮と固有層とのあいだには細かいギザギザのある基礎膜がある.乳頭部Pars papillarisの固有層は比較的密にできていて瞼板組織に続き,これと同じ性状を示す.固有層は涙小管の水平部では縦またはラセン状に走る横紋筋束をともない,これに対して鉛直部では輪走する横紋筋束をもっている.両筋束ともに眼輪筋の一部である.眼輪筋には涙骨の後涙嚢稜およびその後方から2層をなして起る部分があり(その発達の程度は一定しない),これは眼輪筋の涙嚢部Pars lacrimalis m. orbicularisとよばれるが,涙小管の周辺にある筋肉はこのいわゆる涙嚢部の一部なのである.

c)涙嚢Saccus lacrimalisと鼻涙管Ductus nasolacrimalis

 涙嚢Tränensackは眼窩の涙嚢窩のなかにある.涙嚢窩はうすい1葉の眼窩骨膜Periorbitaで被われており,また前後の涙嚢稜のあいだにはさらに厚い1葉の骨膜が張っているので,涙嚢窩はそのままでは眼窩からは全く見えないのである.

 涙嚢の粘膜は涙嚢窩の内面を被うこの線維性被膜と,たいてい疎性結合組織だけによって結合している.眼窩骨膜に包まれる涙嚢窩は長さ約15mm,深さ7mm,幅4~5mmである.涙嚢の形は涙嚢窩の形と一致し,両端が細くなっている.上端はとくに細くなって涙嚢円蓋Fornix sacci lacrimalisとよばれる.涙嚢の上端は内側眼瞼靱帯によって被われている(図662).

 鼻涙管Ductus nasolacrimalis, Tränennasengangは骨性の鼻涙管Canalis nasolacrimalisより下方へさまざまな長さだけ伸びだしている.それはこの管の内側壁がしばしばかなりの長さにわたって鼻粘膜に被われているからである.従って鼻涙管の長さは個体によって著しくまちまちで,12mmから24 mmのあいだで変化する.鼻涙管は外鼻孔の後縁の30~35mm後方で下鼻道に開口している.

 この開口が骨性鼻涙管の開口と同じ高さにあるときには,その口が広くて縁が鋭いことがある.開口がもっと下方にあるときには,鉛直方向の裂け目になっていることが普通である.鼻涙管の下端が盲端をなしていることがあり,その場合には側方の開口が生じうる.また両方の開口が同時にみられることもある.開口より下方にさらにつづいて,1本の粘膜の溝がかなり長く伸びていることが稀でない.開口を内側から被う粘膜葉がよく発達しているときには,これを鼻涙管ヒダPlica ductus nasolacrimalisとよぶ.これは弁をなして呼気のときに閉じ,吸気のときには開く.

 涙嚢の粘膜は骨膜にゆるく付着しているだけであるが,鼻涙管と骨膜の結合はそれより密である.とはいっても粘膜と骨膜とは,下鼻甲介の静脈叢の続きをなす密な静脈叢によってたがいにへだてられているのである.

 微細構造:涙嚢の粘膜も鼻涙管の粘膜も,その結合組織性部分が,多数のリンパ球をもつ細網性結合組織(その発達の程度はまちまちであるが)でできている.涙嚢から鼻涙管の開口にいたるまで粘膜上皮は部分的に線毛をもつ背の高い円柱上皮であって,その基底部に補充細胞Ersatzzellenがある.また杯細胞Becherzellenがしばしばみられる.鼻涙管の下部には粘液腺が存在するが,上部では個体によってあったりなかったりする.

3. 眼球と眼瞼の運動装置(図652, 660664)

 眼窩内での眼球の運動は1群の筋によってなされる.これらの筋はその走向によって直筋と斜筋に分けられる.直筋Musculi recti, gerade Augenmuskelnは4つ,斜筋Musculi obliqui, schrdige Augenmuskelnは2つある.

 眼球の運動は眼球の矢状軸・横軸・鉛直軸のまわりに回転する諸方向に行われる.これらの各方向に眼球を動かすのに2つづつの筋がはたらいている.その2つの筋は眼球で相反する側でしかも対応する点に付着しているのである.このような筋の配列は多様な中間運動をも可能にすることはもちろんである.そして眼球のあらゆる運動は次の要求をみたすことを第一としている.すなわち可視対象から網膜に投ぜられる像が最も正確にはっきりと現われるように,網膜における視軸の終点の位置を定めることである.従ってこれらの筋は角膜の前面と瞳孔とが,見ようとする対象め方へ向けられるように,眼球の位置を変えるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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