Rauber Kopsch Band2.628   

 眼窩にはこれらの眼球に付く諸筋のほかに,上眼瞼のなかに停止して上眼瞼をひきあげることを使命とするもう1つの筋がある.これが上眼瞼挙筋である.

 眼瞼にはその他に眼瞼裂を閉じるはたらきをする眼輪筋の眼瞼部がある.なおまた眼瞼には瞼板筋M. tarseusという平滑筋の1層がある.最後にまた眼窩筋M. orbitalisという名前の平滑筋の存在についても触れておかねばならない.これは下眼窩裂の閉塞にあずかっている.

a)眼球の諸筋
1. 眼球直筋Mm. recti bulbi(図660, 661, 662, 664)

 視神経と眼球のまわりに4つの直筋が集まり,それは上・下・内側・外側をそれぞれ1つづつの直筋が走っているのである.すなわち上,下,内側,外側[眼球]直筋M. rectus bulbi superior, inferior, nasalis, temporalisである.これらの直筋は眼窩の尖端から視神経のまわりを囲んで前方へ走り,赤道より前で眼球につく.それらの長さは約4cmである.

 いちばん重量があるのは内側直筋である(0.7479)が,外側直筋の方がいっそう重いこともある.最も細いけれども最も長いのが上直筋である.4つの直筋はその走向によって1つの円錐を囲むことになる.この円錐の底は眼球に,尖端は眼窩の尖端に当たっている.これらの直筋はいわば眼筋円錐Augenmuskelkegelの主成分をなしている.しかし眼筋円錐はなお上眼瞼挙筋と上斜筋の参加によってはじめて完全なものとなる.

 四つの直筋は眼窩の尖端のところで,視神経管のまわりや上眼窩裂のこれに隣接する部分から短い腱をもって起る.上および内側直筋と上眼瞼挙筋と上斜筋は上眼窩裂の上面から起るが,上直筋と上眼瞼挙筋とは同時に視神経管の上面からも起こっている.内側直筋と上斜筋は視神経管の内側から起り,またこの2筋の起始腱は視神経の硬膜鞘にもついている.なお各直筋の起始部が視東を輪状にとり囲んでいる.(ただし視神経は中心からはずれて位置を占め,上内側に偏している.)各直筋の腱にとって共通の起始をなしているこの結合組織塊は総腱輪Anulus tendineus communisとよばれる.外側直筋は2脚に分れた腱をもって始まるのが普通で,大きい方の下脚は総腱輪から,弱い方の上脚は蝶形骨小翼の基部の下面から起こっている.両脚のあいだに1つの孔があって,第3と第6脳神経および第5脳神経の鼻毛様体神経がここを通って末梢への道をたどる(図661).

 さてこれらの直筋は上に述べた起始部から前方へすすんで,眼球の赤道より前にある付着帯Insertionszoneに達するのである.筋質部から停止腱への移行は付着部から4~8mm離れたところにある.腱線維は強膜の線維束と密に交織して,強膜の内部にまでも進入している.付着部は角膜縁から7~8mm離れている.いちばん幅がひろいのは内側直筋で,いちばん間隔がひろいのは内側直筋と上直筋の腱のあいだである.最も相接近しているのは上直筋の腱と外側直筋の腱である.強膜は腱と線維を交織しあうところに,かなり著明な前方の肥厚部をもっている.

 各眼筋をつ,む結合組織性の鞘はすでに述べた眼球被膜Capsula bulbiという結合組織葉とつづいている,また眼筋の鞘は眼窩骨膜および結膜円蓋とも結合し,そのうち2つの鞘はまた筋膜尖Fascienzipfelとよばれる線維索によって眼窩壁とも結合している(図662).頬骨前頭縫合のところはこの筋膜尖の付着部の1つであり,もう1つの付着部は滑車の下のところである.つまりこの2つの場所に外側および内側の筋膜尖がついている.この2つの筋膜尖が結合することによって,眼球はその位置を保証され,その運動が大きすぎないように守られている.また結膜円蓋に行つている筋膜尖は,関節包を緊張する筋と同じように働き,結膜がはさみこまれないようにしている.上直筋は同時に上眼瞼挙筋とも結合組織性のつながりをもっているので,上を見る運動は眼瞼の挙上をたすけることになる.下直筋の鞘からは著明な線維束が下眼瞼へ行つている.

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最終更新日13/02/03

 

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