Rauber Kopsch Band2.631   

 この線維束のうち眼瞼板にいたる部分には平滑筋が織りこまれている.平滑筋性の瞼板筋M. tarseusというのはこの筋板である.一方上眼瞼の瞼板筋は上眼瞼挙筋の終末腱に伴っている.

2. 斜筋 Mm. obliqui

a. 上[眼球]斜筋 M. obliquus bulbi superior(図660, 662, 664)は諸直筋が起る総腱輪の外で,視神経管の前および内側から,また眼窩骨膜と視神経の硬膜鞘とから起こっている.眼窩の上内側隅で内側直筋の上を前進して滑車小窩の近くで腱性となり,滑車Trochlea, Rotteに達する.ここで円い断面をした腱をもって滑車を通りぬけてから,鋭角をなして後外側へ方向を転じて眼球に向う.その腱が扁平にひろがって眼球と上直筋とのあいだに分け入り眼球に達する.その付着部は眼球の上半で赤道より後方であり,角膜縁から18mmはなれている.滑車をすぎでからの腱の長さは19.5mmであり,付着線は斜めに走っている.

 滑車は上斜筋の腱をうける鞍形をした硝子軟骨で,大よその長さ6min,幅4mmである.短い線維束群によって滑車小窩Foveola trochlearis(または滑車棘Spina trochlearis)ならびに眼窩口縁の骨膜に固定されている,上斜筋の腱は滑車の軟骨の鞍状面の上へ後方から到来し,方向を転換して去るが,そのさいこの腱は滑車滑液鞘Vagina synovialis trochleaeによって包まれている.この腱は滑車を過ぎてから先ではとくに強い結合組織鞘で包まれている.

 変異:明らかに上斜筋から分裂した1筋束が(左の眼窩で)“かなり著明な腱として上斜筋の起始部から起り”滑車を保持する線維に付着していた.同じ個体(ヨーロッパ人)の右の眼窩でも,その発達はいっそう弱いながら,同じ変異がみられた.Fujita, Folia anat. JAponica 1938.

b. 下[眼球]斜筋M. obliquus bulbi inferior(図661, 662)は上顎骨の眼窩面から起る.すなわち眼窩口縁のところで後涙嚢稜の下端の外側から起こっている.筋腹は眼窩底と下直筋とのあい葦を弓状に外側ならびに上方へ向かって走り,眼球の外側に達する.その扁平な腱はやはり赤道より後方で強膜に付着する.

 眼筋の神経:外転神経が外側直筋を,滑車神経が上斜筋を,動眼神経が残りのすべての眼筋を支配している.

 眼筋の 作用:内側直筋は眼球を内側へ,外側直筋は外側へ回転する.上直筋は上方かつやや内側へ,下直筋は下方これまたや」内側へ回転する.上斜筋は角膜が外側下方へ向くよ季に眼球を回転する.下斜筋は角膜がやはり外側へ,しかし同時に上方へ向くように回転する.

 従ってまっすぐ内側への眼球回転は内側直筋が行ない,まっすぐ外側への眼球回転は外側直筋が行なう.まっすぐ上方への回転には上直筋と下斜筋が共に働き,まっすぐ下方への回転には下直筋と上斜筋がいっしょに働く.対角線的な方向の回転には3つの筋が共に働くのである.すなわち内側上方への回転には内側直筋と上直筋と下斜筋がはたらく.また内側下方へは内側直筋と下直筋と上斜筋,外側上方へは外側直筋と上直筋と下斜筋,外側下方へは外側直筋と下直筋と上斜筋がはたらくのである.

b)眼瞼の諸筋

1. および2. 上眼瞼挙筋M. levator palpebrae superiorisと瞼板筋Mm. tarsei(図652, 660, 661, 662).

 上眼瞼挙筋は短い腱をもって視神経管の上部と視神経の硬膜鞘とから起り,そのさい上直筋の起始腱と合してはいるが総腱輪の外にある.そのほつそりした薄い筋腹は眼窩の上壁の下方で,前頭神経の下,上直筋の上を前方へ走り,眼窩口縁のあたりで黄白色の放散する形の腱に移行している.この腱板が2層に分れていて,上(前)の層は浅板Lamina superficialis,下(後)の層は深板Lamina profundaとよばれる(図652, 661).

S.631   

最終更新日13/02/03

 

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