Rauber Kopsch Band2.632   

上層の浅板は眼輪筋と上眼瞼板のあいだを走って随毛のところまで下りてゆく.そのさい多数の線維束をだして,これらは眼輪筋の筋束のあいだを貫いて上眼瞼の皮膚に停止する.眼瞼板の前面への付着はH. Virchowによれば存在しない.

 腱板の下(後)層すなわち深板はかなり多量の平滑筋線維--瞼板筋M. tarseusを含んでおり,上眼瞼板の上縁とその前面に付く.挙筋の腱板から内側と外側へ尖頭状に伸びだした線維束は眼窩の内外両側壁に達している(図662).

 上眼瞼の瞼板筋から薄い1筋束が分れでて滑車のあたりにいたることがしばしばあり,これがBudgeの滑車張筋M. tensor trochleae である.下直筋の鞘から結合組織の線条が下眼瞼と眼輪筋の後面とにゆく.これに相当するものが上眼瞼では独立した挙筋の腱になっている.ところで上眼瞼挙筋は上直筋から分離した筋束としての意味をもつのである.下直筋の方はこのように徹底した分裂を示さない.つまり下直筋は上直筋プラス上眼瞼挙筋に相当している.

3. 眼輪筋については顔面筋(第I巻401頁)と眼瞼(621頁)の項ですでに述べた.

c)眼窩壁の筋

 下眼窩裂は眼窩骨膜の一部である眼窩膜Membrana orbitalisによって閉じられている.この膜には平滑筋線維がさまざまな量に織りこまれて眼窩筋M. orbitalisをなしている.とくに眼窩膜の中央3分の1のところには平滑筋線維が豊富である.筋線維の走向はまちまちであるが,Hesserによれば大体に横の方向(前額方向)に走るものが優勢であるという.この筋は交感神経の支配をうけている.

4. 眼窩の内容

 眼球と視神経は眼球を運動させる装置および涙腺とともに骨膜で裏うちされた眼窩の骨壁の内にあって,眼窩脂肪体Corpus adiposum orbitaeとよばれる眼窩内の豊富な脂肪組織によって包まれている.さらに眼球はその周囲の大きい部分を眼球被膜Capsula bulbiという特別の結合組織膜で包まれている.この膜は視神経や眼筋ともつながっている.眼窩の内容は,眼窩口縁をめぐって眼窩骨膜から伸びだす結合組織膜すなわち眼窩隔膜Septum orbitaleによって前方を開ざされている.

a)眼窩と眼窩骨膜

 眼窩Orbitaについてはすでに第1巻187頁に述べた.

 眼窩骨膜Periorbitaは眼窩の骨壁を被う骨膜で,次のようないくつかの特殊性をもっている.

 眼窩骨膜は視神経管, 上眼窩裂, 眼窩頭蓋管を通じて脳硬膜とつながっており,下眼窩裂によって上顎骨の骨膜に移行している.また眼窩口縁をこえて近くの骨の骨膜につづき,鼻涙管と眼窩篩骨管によって鼻腔の骨膜につづき,視神経管の前縁では視神経の硬膜鞘に接続して両者は密に融合しあっている.脳硬膜の方からたどってみると,この膜が視神経管のところで2葉に分れ,その1葉は眼窩骨膜となり,他の1葉は視神経の硬膜鞘となる.従って硬膜は眼窩のなかでは脊柱管のなかと同様の態度をとり,その2成分すなわち骨膜性と神経性の両部に分離しているのである.

 眼窩骨膜は平滑な骨面ではゆるく付着しているに過ぎないが,骨のいろいろな孔のところではいっそう密についている.眼窩骨膜の内表面からは少数の結合組織索が出て眼窩脂肪体のなかに進入する.

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最終更新日13/02/03

 

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