Rauber Kopsch Band2.634   

 眼窩脂肪体は眼筋円錐によって不完全ながら内外の2に分けられる.

 内層は外層にくらべると著しく大きくて,眼筋と視神経と眼球後面のあいだにある.ロート状の場所をみたしている.外層はそれより薄くて,眼筋円錐のまわりを包み,眼窩の後部でうすく,前部で比較的厚くなっている.眼窩脂肪体が減ると眼球がうしろへ落ちくぼんで,視神経はいっそううねって走ることになる.

c)眼球被膜Capsula bulbi(旧名テノン被膜Capsula Tenoni) (図664)

 眼球の中央部と後部は線維性の被膜でゆるく包まれ,この被膜によって眼球は眼窩脂肪体との直接のつながりを絶たれている.眼球被膜から外方へは結合組織葉がでて,脂肪小葉を仕切る結合組織と多くの場所でつながっている.また眼球被膜と眼球とのあいだは多数の微細な小糸によって結合している.ここで結合組織の小梁が貫いている場所はリンパ隙であって,眼球周囲隙Spatium circumbulbareとよばれる.

 眼球被膜は前方は眼球結膜にまで伸びて,結膜円蓋から2, 3mmはなれた所で1つの円周線に沿って結膜下組織の中で消えている(眼球の後極の近辺では眼球被膜がうすくなって,視神経が眼球にはいるところの近くではこの被膜は強膜と癒着(Hesser)している).

 眼筋は眼球被膜に対して重要な関係をもっている.すなわち各眼筋の腱が眼球周囲隙を貫くさいに,眼筋の結合組織鞘は眼球に近づくほど強固になり,眼球被膜へと方向をかえながらこれに移行している.またよく言われるようにこの関係を次のように言いあらわすこともできる.眼筋の腱が眼球被膜を貫くとき,被膜は逆行する鞘を筋にあたえ,この鞘は筋の表面を被い,筋の起始部の近くではうすくなっている.この結合組織性の鞘は外筋周膜Perimysium externumのよく発達したものであつで,眼筋筋膜Fasciae muscularesとよばれる.眼球周囲隙は腱に沿って眼筋の方へ(とくに眼筋の外面で)短い距離だけたどることができる.しかし眼球被膜を貫く腱は,その側稜から発する結合組織束が眼筋筋膜の稜と癒合し,それによって腱が強膜にいたる経路が保証され固定されているのである.眼球被膜を貫く腱の数が6つであることは,前に述べたことから改めていうまでもない(図664).

 H. Virchow, Über Tenonschen Raum und Tenonsche Kapse1. Abh. Akad. Wiss. , Berlin 1902.-C. Hesser, Der Bindegewebsapparat. . . . d. Orbita u s w. Anat. Hefte 1913.

d)眼窩隔膜Septum orbitale(図652, 663)

 眼窩隔膜は線維性のうすい板で,眼窩内容を前方から閉鎖している.眼輪筋のすぐ後方にあって結合組織によってこれにつづいている.

 上下の両眼窩隔膜は眼窩口縁から起り,そこでは眼窩骨膜および眼窩口を囲む諸骨の前面の骨膜と結合している.そして眼窩隔膜は上下の眼瞼板の外縁に付着するのであるが,そこへ近づくほどに次第に厚さを減じている.眼窩隔膜の前面からは結合組織束が眼輪筋の筋束のあいだへ伸びている.

5. 眼窩のなかでの眼球の位置

眼球は眼窩のなかで正確にその中軸部にあるのではなくて,内側および下方の壁よりも外側および上方の壁に1~2mmだけ近い.また角膜頂が眼窩口の面にちょうど達しているのが普通である.

 従って眼球は上方と下方で骨性の眼窩縁によって保護されている.内側でも鼻の骨が同様にその保護にあたっている.ところが外側では骨による保護がはなはだ不完全で,眼球の外側面の大きい部分はこの方向から何の抵抗もなく到達されるのである.眼窩を水平断して眼窩の内外両側縁を直線で結ぶと,この線は眼球の外側面を鋸状縁のうしろで切るのに対して,内側面を角膜縁のところで切る.

S.634   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る