Rauber Kopsch Band2.636   

I. 聴覚器の補助装置

A. 外耳Auris externa, äußeres Ohr

外耳は次のものからなる:

 1. 頭の側面に突出している部分すなわち耳介Auriculaと,

 2. そこから始まって鼓膜Membrana tympariiによって内側端をとざされている外耳道Meatus acusticus externus.

1. 耳介Auricula, Ohrmuschel(図667669)

 形:耳介は耳介軟骨Cartilago auriculaeというかなりの広さをもつ軟骨板で支えられた皮膚のひだである.だいたい貝殻または中空の円錐のかたちで,外耳道の入口を塁壁のように囲んでいるが,その前縁だけに切れこみがある.

 耳介の外面(後面)は全体としては凸,内面(前面)は凹であるが,両面ともに特別な高まりやくぼみがいくつかある.耳介の長さは5~7cm,幅は3~3.5cmである.(日本人での計測値もこの範囲にはいる.しかしアイヌではヨーロッパ人や日本人よりかなり耳が長い(相貌学でいう耳長が大きい).また耳介は成人後にも成長をつづけることが興味ふかい.宮嶋巍,日耳鼻42(1936),山本三男,金沢解剖業績42(1952).増川允通,谷口編:人類学人類遺伝学体質学論丈集25(1956)など.)頭に対する付きぐあいも個体によっていろいろに違っている.つまり頭からの離れぐあいや長軸の方向がさまざまである.

 耳介の縁はその全長の大部分がへこんだ内面の方へ巻きこんでいる.かくして耳介の上部3/4をとり囲む隆起が生じ,これを耳輪Helixという.耳輪が外耳孔の上ではじまる部分は耳輪脚Crus helicisとよばれる.耳輪の内側には対輪Anthelixというもう1つの高まりがある.これは外耳孔の上方で対輪脚Crura anthelicisという2脚をもってはじまり,両脚は短い距離だけ走ってから相合して対輪をつくるのである.耳介の前縁には外耳孔を前から不完全に被って後方へ伸びる突起がある.これが耳珠Tragusである.そのうしろには下方の珠間切痕Incisura intertragicaという深い切れこみによって耳珠からへだてられた1つの突起が,下後方から前上方へ伸びている.これが対珠Antitragusであって,対輪が上の方から伸びてきてこれに続く.耳介をなす皮膚のひだは対珠と珠間切痕より下方では軟骨の支柱をもたず,脂肪組織を含んでいるだけである.外耳のこの部分を耳垂Lobulus auriculaeという.耳垂はその基部の後部だけが軟骨の支柱をもっている.それは耳介軟骨の細い1突起である耳輪尾Cauda helicisがここに含まれるのである.

 耳輪と対輪とのあいだには耳介縁に平行して弯曲して走る1本の溝があり,舟状窩Scaphaとよばれる.この溝は上前方で両対輪脚のあいだのさらに広い溝につづいている.この溝を三角窩Fossa triangularisという.対輪と耳珠に囲まれて,耳甲介Concha auriculaeという耳介で最大のくぼみがひろがっている.このくぼみは耳輪脚によって小さい上部と,大きい下部に分けられる.上部は耳甲介艇Cymba conchae,下部は耳甲介腔Cavum conchaeとよばれる.また顔の外側面から耳輪と耳珠のあいだを通って耳甲介腔にいたる溝は輪珠溝Sulcus helicotragicusとよばれる.あたまの方に向かっている耳介の外面(後面)では,内面(前面)でのへこみが高まりとして現われている.従ってここでは舟状窩隆起Eminentia scaphae,三角窩隆起Eminentia fossae triangularis,甲介隆起Eminentia conchaeが区別される.これに反して対輪には対輪窩Fossa anthelicisが対応し,これはやはり2脚に分れている.そのうちの下方の脚は横対輪溝Sulcus anthelicis transversusとよばれる.

 耳輪の自由縁はすこし巻きこんで,その端がうすくなっている.そしてここに突出や切れ目がみられることが珍しくない.とくに興味深いのは[ダーウィンの]耳介結節Tuberculum auriculae[Darwini]とよばれる突出であって,これは耳輪の下行部の上部に見いだされ,とがった耳をもつ哺乳動物では,正にその耳の先端のところにこの耳介結節が当るのである.ヒトの耳でも耳輪の形成が不完全なときには,ダーウィン結節が後方へ突出していることがある.

S.636   

最終更新日13/02/03

 

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