Rauber Kopsch Band2.645   

 鼓膜の諸層(図677):鼓膜は3つの異なった層からできている.固有板Lamina propriaとよばれる線維性の膜が丈夫な基層をなしている.その辺縁の著しく厚くなった部分が前述の線維軟骨輪Anulus fibrocartilagineusで,これが鼓室輪溝に固着している.固有板の外面には皮膚層Stratum cutaneumがあり,内面には粘膜層Stratum mucosumがある.

a)皮膚層は外耳道の皮膚がうすくなって続いているのであって,その厚さは50~60µにすぎないが,ツチ骨条のところだけは0.4mmもの厚さがある.外耳道の上壁から鼓膜へ進入してくるこの肥厚した線条--皮膚索Kutisstrangのなかを,鼓膜の主要な血管と神経が下りてきて膀に達する.表皮は約10層の細胞からなる重層扁平上皮で,表面は脂肪でうるおされており,皮膚索のところでは厚くなっている.皮膚の神経終末について知られている所にしたがえば,鼓膜上皮には知覚神経線維の自由終末が豊富に存在すると思つてよい.真皮は半透明の部分ではごく薄い(20µ以下)が,皮膚索では著しく厚くて(113mmに達する),ここには乳頭もある.ヒトの鼓膜には毛と腺が全然ない.皮膚索のほかでは乳頭がない.乳頭は外耳道の皮膚にはよく発達しているが,鼓膜では皮膚索のところ以外は線維軟骨輪にまでしか分布していない.

b)固有板は鋭角をなしてたがいに結合する扁平なかたい結合組織線維束からなり,2層をなしている.すなわち外層は線維が放射状に走るので放線状層Stratum radiatum,内層は線維が輪走するので輪状層Stratum circulareとよばれる.

c)粘膜層Stratum mucosumは皮膚層よりはるかに繊細で,固有板にしっかりついている,線毛をもたない単層の扁平上皮と薄い細網性の固有層とからできている.固有層のすきまには白血球も存在する.

[図677]成人の鼓膜の下縁とその付近 放線方向に切断(×60)

[図678]成人の鼓室の粘膜 横断(×450)

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最終更新日13/02/03

 

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