Rauber Kopsch Band2.646   

この粘膜はツチ骨柄の上にもひとつづきに続いており,従ってここではツチ骨柄の被いをつくって,ツチ骨の骨膜と続いているのである.また線維軟骨輪のところでは鼓室の粘膜に移行している.その移行縁では粘膜が絨毛状ないし乳頭状に隆起しており,その中に血管係蹄がある.このような隆起がさらに中心部の方へ伸びて,ツチ骨柄のところにも現われることがある.

 鼓膜の弛緩部には皮膚層と粘膜層があるだけで固有板がない.前述の皮膚索は外耳道の上壁から弛緩部を通って緊張部に進入するので,弛緩部はその場所で厚くなっている.

 鼓膜の血管:内外の血管網が区別され,前者は粘膜層に,後者は皮膚層に属する.外血管網は次の動脈から血液をうける.

1. 多数の小さい放線状辺縁動脈radiäre Randarterien.これは外耳道の皮膚からやってきて,鼓膜の辺縁から放射状に皮膚層に進入し,まもなく毛細管になってしまう.

2. 外ツチ骨柄動脈A. manubrialis externa:深耳介動脈から起る1本の比較的太い動脈小幹で,ツチ骨柄のうしろで鼓膜の皮膚索のなかを下って鼓膜騒齊にいたり,2本の枝(それから先でさらに分枝する)に分れる.この動脈の幹からも,またその枝からも,たくさんの細い枝がでて,放射状に皮膚索から鼓膜へ進入している.

 集まってくる静脈血は血液をここにみちびいた両動脈と同じ2つの方向に流れてゆく.すなわちツチ骨柄静脈叢Plexus venosus manubriiと辺縁瀞脈叢Plexus venosus marginalisによって運び去られるのである.

 内血管網は鼓室動脈Aa. tympanicaeから動脈血をうける.それにはツチ骨柄の粘膜のなかを下ってくる小さい動脈--内ツチ骨柄動脈A. manubrialis internaがとくに関与している.さらに1本の動脈が鼓室の底から鼓膜の下部に達し,その枝は内ツチ骨柄動脈の枝と吻合している.静脈1血はここでも主として2つの方向に流れさる.鼓膜の辺縁部と中間部では内外の静脈が穿通枝によってつながり合っている.固有板に固有の毛細管網があるかどうかはまだ確かでない.

 鼓膜のリンパ管は1. こまかい皮膚リンパ毛細管網と 2. わずかの粘膜網とからなっている(Kessel).

固有板には角膜と同じように液細管系がある.

 鼓膜の神経はとくに外耳道神経(三叉神経第3枝の耳介側頭神経からの枝)の1枝である鼓膜枝R. membranae tympaniから来ている.この枝は皮膚索のなかを走って鼓膜に達し,外ツチ骨柄動脈のうしろを下りてくる.そのほかにいろいろな場所から細い辺縁神経がはいって来る.これらすべての皮膚神経は皮膚層と固有板との境のところで目のあらい基礎神経叢Grundplexasをつくっている.この神経叢から血管神経や,上皮下神経叢をつくる多数の枝が出る.そして上皮下神経叢からほ神経糸が上皮のなかへはいってゆく(Kessel).粘膜層の神経は鼓室神経叢から起こっており,一部は血管神経叢を,一部は上皮下神経叢をつくっている.

B. 中耳Auris media, mittleres Ohr

 中耳は迷路と外耳とのあいだにある側頭骨内の空所すなわち鼓室からなり,一方では耳管とよばれる1つの管によって咽頭腔とつながり,他方では側頭骨の乳様突起内の蜂の巣のような空所につづいている.3つの鼓室小骨が鎖のようにつながって鼓室を貫いている.これらの小骨は外耳の内壁である鼓膜と迷路の外壁とを直接に結合しているのである.

1. 耳管Tuba pharyngotympanica, Ohrtrompete(図86, 182, 666, 679)

 耳管は圧平された形の管で3.5~4cmの長さがある.(相川春雄によれば日本人の耳管はヨーロッパ人のそれと計側値においてほとんど差異がない.日耳鼻39巻8号,1933. )

鼻腔のうしろで咽頭の側壁の上部に,耳管咽頭口Ostium pharyngicum tubae pharyngotympanicaeという開口をもって始まり,外側後方へと細くなりながらのびて鼓室に移行する.その移行するところが耳管鼓室口Ostium tympanicum tubae pharyngotympanicaeである.耳管の走向は大体において矢状方向と前額方向とのほぼ中間である.しかも同時に咽頭口から鼓室口へとかるい傾斜で上つている.耳管は次の2部分からなる:a)耳管軟骨部Pars cartilaginea tubae pharyngotympanicaeは内側の長い方の部分であって,軟骨と線維膜で囲まれ,耳管の全長の約2/3を占める.

S.646   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る