Rauber Kopsch Band2.647   

b)耳管骨部Pars ossea tubae pharyngotympanicaeは外側の短い方の部分で,骨性の壁でかこまれて側頭骨のなかにある.これは側頭骨の耳管半管Semicanalis tubae pharyngotympanicaeが粘膜で被われたものに他ならない.両部が移行しあう場所は,また最も狭い部分でもあって,耳管峡Isthmus tubae pharyngotympanicaeとよばれる.また耳管骨部には耳管[含気]蜂巣Cellulae pneumaticae tubalesといういくつかの小さいへこみがある.

a)耳管軟骨部では粘膜と耳管軟骨とが区別される.耳管軟骨Cartilago tubae pharyngotympanicae, Tubenknorpelは1枚の軟骨で,その長さは2.3~3cmあり,咽頭端では幅がかなりひろくて約1cm,ここでは厚さも2~5mmあるが,鼓室へ近づくほどに幅も厚さも著しく減ずる.この軟骨板の縦の方向は耳管の方向に一致しており,両側面はほぼ鉛直に立っている.上縁は外側へそりかえっているので,ここに1つの半管(樋)がつくられる.その中を耳管粘膜の管が走っているのである.耳管軟骨の樋は外側下方へ開いていて,この範囲では粘膜が1枚の線維膜だけで包まれる.この膜は膜性板Lamina membranaceaとよばれて,耳管軟骨の樋の部分をも裏うちしているのである(図666, 679).

 耳管軟骨の横断面は鈎の形をしている.その自由縁はまるくなり,多少厚くなっている.この外側部は外側板Lamina cartilaginiS lateralisとよばれて,耳管軟骨の鼓室端ではこの方が強大で,内側板Lamina cartilaginis medialisの方が短い付属物と見えるにすぎない.しかしまもなくこの関係が逆になる.すなわち咽頭の方へすすむにつれ内側板が急速に大きくなり,こんどは外側板の方が付属物のようになってしまう.耳管軟骨の鼓室端は耳管骨部に行きあたって,骨部の端のギザギザした粗面に,線維塊によってかたく結合している.耳管軟骨の上壁は頭蓋底に固着し,前方は蝶形骨の舟状窩に,それより後方では蝶骨錐体裂の線維塊に付いている.

 耳管軟骨の形は個体により差異がはなはだしく,それはとくに咽頭端が著しい.まだ咽頭端にならぬ所でも,血管を伴って侵入する軟骨膜の突起や粘膜の腺によって,軟骨に大小さまざまな割れ目がはいっていることがある.またいわゆる耳管の過剰軟骨板 accessorische Knorpelplättchenは咽頭に近い下部ではしばしばみられるものである.

 耳管軟骨は硝子軟骨に属するが,線維軟骨の性状を示す部分もある.咽頭端では弾性線維が多少とも豊富に,またいろいろな広がり方に混入している.

b)耳管骨部は直接に鼓室に通ずる部分で,断面は角のとれた三角形を呈し,その横径およそ2mmである.内側は頚動脈管に,外側は錐体鱗裂Fissura petrosquamalisに,上方は筋管総管中隔Septum canalis musculotubalisに,下方は鼓室稜Crista tympanicaに接している.耳管骨部は錐体尖の近くでまわりの不規則な粗縁をもって終り,ここに耳管軟骨が固着している.

 粘膜Tunica mucosaは咽頭粘膜のつづきで,咽頭の近くではその粘膜の性状を保ち,厚さは0.5~0.6mmである.ところが鼓室に近づくにつれて厚さが著しく減じ,鼓室の薄い粘膜につづくのである.粘膜は疎性結合組織によって軟骨膜と結合し,そのあいだが移動可能である.これに反して耳管骨部では粘膜下組織が少なくて骨膜と癒合している.粘膜には不規則な縦のひだがあり,これは骨部の下壁にあるものは繊細であるが,軟骨部ではかなり強く発達している.上皮は単層線毛上皮で,多数の杯細胞と補充細胞をもっている.線毛の流れは咽頭口の方へむかつている.粘膜固有層は線維性の結合組織で,咽頭の近くでは細網性の性状をかなり強く示し,多数の白血球をふくんでいる.そこの粘膜に小さいリンパ小節さえ存在することがあって,耳管リンパ小節Lymphonoduli tubalesとよばれる.そのほか軟骨部の粘膜には粘液腺Glandulae mucosaeがたぐさんある.

 咽頭口からはじまって鼓室の方へ或る距離のあいだは,この上皮性の腺がひとつづきの層をなしている.鼓室へ近づくほどにこの腺は少くなるが,鼓室口のところでも,まばらながらやはりあるにはある.とくに大きい腺は咽頭口の近くにみられる.こ,では開口のまわりの咽頭粘膜内にある腺の導管によって,軟骨に孔があいているほどである.

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最終更新日13/02/03

 

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