Rauber Kopsch Band2.648   

 耳管の動脈は翼突管動脈A. canalis pterygoideiおよび上行咽頭動脈A. pharyngica ascendensから来ている.中硬膜動脈も関与していることがあり,その場合にはこの動脈の錐体枝R. pyramidisが錐体鱗裂を通って耳管上壁へごく細い枝を送っているのである.リンパ管は骨部にも軟骨部にも数多くあって,咽頭口のところで咽頭粘膜のリンパ管とつづいている.

 神経は鼓室神経叢Plexus tympanicusからの耳管枝R. tubae pharyngotympanicaeと咽頭神経叢Plexus pharyngicusからの枝である.線維は有髄と無髄のものがともに存在し,多くの顕微鏡的な神経節をもっている.

 骨部の内腔は血管の充満の程度によるわずかな変化を示す以外は全く動きがない.軟骨部の大部分では線毛をもつ両側壁が相寄っていて,そのため内腔の下部と中部は高さ7mmぐらいの鉛直の裂隙をなしている.しかし裂隙の上部すなわち軟骨のカギの手の部分で囲まれる.ところは,粘膜の表面が軟骨板の曲線に沿ってまるくなっている.そのため内腔の上部は常に開いた管になっており,ここを安全管Sicherheitsröhreとよぶ.そして裂隙の残りの部分は補助隙Hilfsspalteとよばれるのである.しかし軟骨部の前方部では軟骨のカギの手が次第に弱くなり,ついにはなくなってしまうので,粘膜の表面が全体にわたって寄り合っている.補助隙の壁はふだんは相接しているが,口蓋帆張筋が収縮すると,その接触がひき離されうるのである(図679).

 耳管の最も狭い部分すなわち耳管峡Isthmus tubae pharyngotympanicaeは軟骨部と骨部のつながるところにある.耳管は上下の両方の口で広くなっているが,とくにそれは咽頭口で著しい.咽頭口は卵円形であって,ロート状に開き,ほず前額方向に位置して,耳管軟骨の咽頭端と粘膜のもり上りとによってできた耳管隆起Torus tubalisという高まりの前にある.

[図679]ヒトの耳管とその付近 咽頭口の近くで横断

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最終更新日13/02/03

 

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