Rauber Kopsch Band2.650   

この半管は前庭窓のところまで水平にのびて来て,ここでサジの形に曲がった薄い骨小板に終わっている.これをざじサジ状突起Processus cochleariformis(cochlear=サジ)という.鼓膜張筋半管は,その下方にあっていっそう広いところの耳管半管Semicanalis tubae pharyngotympanicaeと平行している,両半管は筋管総管中隔の薄い骨小板によってしきられている.このしきりは不完全なことが普通であるが,時には完全なこともある.

 乳様突起のなかの多くの部屋は乳突蜂巣Cellulae mastoideaeとよばれる.この部屋は空気がはいっていて,鼓室の粘膜が側方へ伸びだしたためにできた付属物と考えられ,したがってその内面は鼓室粘膜のつづきによって被われている.

 乳突蜂巣の大きさと形, ならびに骨のなかでの広がり方は個体によってまちまちである.鼓室の後壁にある入口からはじまって,錐体の上面の下方をへて乳様突起の表面およびその先端にまで伸び,時おりは側頭鱗のなかや頬骨突起のつけねのなかにまで広がっている.これらの部屋はつながりあった1つの空洞系をなし,各部屋のさかいは時には紙のように薄い骨板で,また時にはかなり厚い壁でできていて,たがいに不完全にしきられている.

 乳突蜂巣は乳突洞Antrum mastoideumという1つのかなり広い部屋に開いている.乳突洞を中耳につなぐ部分は鼓室蓋の下にある1本の短い道で,ここは4方面の壁をもっている.上壁は鼓室蓋によってつくられ,下壁には樋のような形をしてキヌタ骨の短脚をうけているキヌタ骨窩Fossa incudisがある.内側壁には長円形の外側半規管突隆Prominentia canalis semicircularis lateralisという高まりがあり,これは手術のさいに重要な目標になる.また外側壁をなしている骨は骨性外耳道の後壁の上半の,鼓膜に密接する部分にほかならない.

b)鼓室小骨 Ossicula tympani, Gehörknöchelchen(図666, 676, 680685)

 鼓室の上部には3つの鼓室小骨があって,鼓室の迷路壁と鼓膜とのあいだをつないでいる.鼓室小骨は弯曲した1つの鎖をなしており,ツチ骨がいちばん外方の節をなしている.ツチ骨の柄は鼓膜と密に結合している.鎖の中節はキヌタ骨である.また内節はアブミ骨であって,迷路壁の前庭窓にはまりこんでいる.

1. ツチ骨Malleus, Hammer

 ツチ骨にはKörperとよばれる中央部があって,上方はツチ骨小頭Capitulum malleiという球状にまるくなった部分に移行している.ツチ骨小頭の後面には軟骨で被われた鞍形の関節面があって,ここがキヌタ骨と結合するところである.小頭の下にはくびれた場所があってツチ骨頚Collum malleiとよばれる.体からはいくつかの突起がでており,その1つがツチ骨柄Manubrium malleiである.これは少しまがった平たい骨小棒であって,ほぼ頚の延長線上で体から発する.

 ツチ骨の頭と頚とは鼓室の上部で鼓膜より上方,すなおち鼓室上陥凹Recessus epitympanicusのなかにある.頭はほとんど鼓室の天井につくばかりになっており,頚は鼓室の外側壁に密接している.

 長突起Processus longusは頭と頚を通ずる縦の方向に対してほぼ直角にそれた方向へでている ほつそりとして長い小棒であって,煎下方へむかつてのび,錐体鼓室裂の中にはいりこんでいる この突起の先端は平たく広くなっていて,靱帯塊によって側頭骨の錐体と結合している.短突起Processus brevisは柄の初まりの部分から外方へでて,鼓膜の上部に非常にしっかり付着しているので,鼓膜にはその部分で外方へ小さな高まりができている.この高まりをツチ骨隆起Prominentia mallearisという.

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最終更新日13/02/03

 

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