Rauber Kopsch Band2.659   

 上骨半規管Canalis semicircularis superior(前骨半規管Canalis semicircularis anterior(Anterior semicircular canal))は他の迷路のどの部分よりも上方にぬきんでていて,側頭骨錐体部の上面に弓状隆起Eminentia arcuataという高まりを生ぜしめている.その膨大部は上骨膨大部Ampulla ossea superior(前骨膨大部Ampulla ossea anterior(Anterior bony ampulla))とよばれて,外側半規管の膨大部のそばで前庭の上部に開くのである.上半規管の単脚Crus simplexは後半規管の単脚と合して共通の総脚Crus communeとなり,それが前庭の後部でその内側壁に開いている.上半規管の長さは凸側縁で測つて18~20mmである.

 後骨半規管Canalis semicircularis posteriorは22mmあって,3つの管のうち最も長いものである.その膨大部は後骨膨大部Ampulla ossea posteriorとよばれ,前庭の下後壁に接している.後半規管の単脚は上半規管の単脚と合流して総脚になる.

 外側骨半規管Canalis semicircularis lateralisは14~15mmで最も短い.2つの口をもって前庭の上部と後部に開いている.その膨大部は外側[骨]膨大部Ampulla ossea lateralisとよばれ,上膨大部のすぐそばにあり,前庭窓の上でやや前外方に当たっている.単脚は総脚と後膨大部とのあいだで前庭に合する.

4. 蝸牛Cochlea, knöcherne Schnecke(図689697)

 蝸牛は骨迷路の前方部をなし,その基底部はほぼ鉛直に立っており,蝸牛底Basis cochleaeとよばれて内耳道と境を接し,先端は外側に向かっていて鼓膜張筋半管に隣接している.蝸牛はまた前方では頚動脈管に接し,1枚の薄い骨壁でそれと境されているに過ぎない.蝸牛底の幅は8~9mmで,先端と底との距離は4~5mmである.蝸牛の回転の中軸は内耳道の方向とほぼ同じで,いくらか外側下方へと傾いている.

 蝸牛を貫いている管は蝸牛ラセン管Canalis spiralis cochleaeとよばれ,前庭の前下外側の隅からはじまっている(図689).岬角Promunturiumとしてすでに述べた鼓室内側壁のあの高まりは,蝸牛の起始部に当るのである.

 蝸牛の回転の数は2 1/2~2 3/4である.回転は同一平面内でまいているのではなく,前のものより次のものが常にせり上りながら,同時に狭くなってゆくのである.最後の半回転は強く圧平された形をしている点と,第2の回転の終りの部分と同じ高さの面に並んでいる点で,他の部分と異なっている.従って蝸牛頂Cupula cochleaeとよばれる部分は,第2回転の終りの部分と盲端部とを一緒にしたものでできている.ラセン管の全長は28~30mmである.ラセン管の内腔の断面の形は長径2mmの楕円形のところもあれば,半円形やかどのとれた三角形のところもある.もっともこれは蝸牛軸から張りだす骨ラセン板を考慮に入れないでの話である.ラセン管の盲端部はかどがとれてまるくなっている.

 ラセン管によってとりまかれる蝸牛の中軸は,蝸牛軸Modiolus, Spindelとよばれ,海綿状の骨質からできている,つまり蝸牛軸はラセン管の内壁をなしているのである.ま々蝸牛軸の外壁は緻密な骨包でできている.ラセン管の上壁と下壁をなすのは,それぞれの回転と回転のあいだの隔壁Zwischenwandである,隔壁は第1と第2の回転のあいだではかなりの厚さがあるが,それより先にゆくにつれて薄くなっている(図693).

 蝸牛軸は蝸牛底のところで蝸牛軸底Basis modioliをもってはじまるが,その先は蝸牛頂まで達しているのではない.第2の回転と最後の半回転とのあいだを見ると蝸牛軸のつづきのようなものが蝸牛頂にまで伸びている.しかしこれは緻密骨質でできていて,これらの両回転のあいだの隔壁の部分にほかならないのである.これは蝸牛軸板Lamina modioliとよばれる.

 

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最終更新日13/02/03

 

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