Rauber Kopsch Band2.661   

 骨ラセン板は最後の半回転の初まりのところで蝸牛軸からはなれて,鎌形の骨小板として遊離した状態で蝸牛腔内につき出ている.この遊離した骨ラセン板の部分は骨ラセン板鈎Hamulus laminae spiralis(図689, 692)とよばれ,その凸縁が外方に向き,凹縁が蝸牛軸板(すなわち蝸牛軸のつづき)の方に向いている.このようにして骨ラセン板鈎によって囲まれて生ずる門は蝸牛孔Helicotrema(図694)とよばれる.膜ラセン板は鈎の凸縁から起こっており,蝸牛管もそれにくっついていて,いずれもこの蝸牛孔を充たしていない.この門を通って前庭階と鼓室階とがたがいに移行しているのであって,これら両階は他の場所では完全に分離されていて,この蝸牛孔を通じてのみ,いつも自由につづいているのである(図694).

 骨ラセン板は緻密な1つの骨板ではなくて,ラセン状のすきまによって2葉に分れている.そのうち前庭階がわの1葉はかなりの厚さがあるが,鼓室階がわのものは薄い骨の箔をなしているにすぎない.このすきまは骨ラセン板の中をその全長にわたって伸びており,蝸牛神経がその終末領域である蝸牛管ヘラセン状に放散して達するさいに,その通路をなしている.このすきまは蝸牛軸に近づくと横断面が卵円形の管となり,広くなっている.この部分は蝸牛軸ラセン管Canalis spiralis modioliとよばれ,その中にラセン神経節Ganglion spirale cochleaeがある.蝸牛軸ラセン管にはラセン列の孔からはじまるたくさんの管,すなわち蝸牛軸縦管Canales longitudinales modioliが続いている(図686, 688).

 鼓室階の初まりのところに蝸牛小管の内口Abertura abyrinthica carialiculi cochleae(図689)がある.蝸牛小管はここでロート状をなしてはじまり,側頭骨の錐体の下面にある蝸牛小管の外口Apertura externa canaliculi cochleaeという円錐状のくぼみで終ることは,すでに骨学で述べた.蝸牛小管の内口からわずかに離れたところに,横走する小さい骨隆線がある.これは蝸牛窓稜Crista fenestrae cochleaeとよばれ,第二鼓膜の付着に関係している.さ. らした標本ではこの稜が蝸牛窓と鼓室階とのあいだのいわば閾をなしている.

迷路の鋳型(図695697)

 鋳型をみることによって迷路の内腔の観察を補なうことにしよう.鋳型によって内腔の全系統が立体的な像として示される.そのさい自然の状態でのくぼみは高まりとして,また突出部はへこみとして現われるのであるが,空所の形とその相互関係がを無はだ明瞭にわかるのである.

[図695697]骨迷路の鋳型(ベルリン大学解剖学教室の標本によってM. Wendland描く)×2

 図695は左の迷路を外方から, 図696は右の迷路を内方から, 図697は左の迷路を上方からみる.a, a, a 半規管の膨大部;s 上半規管,p 後半規管,e 外側半規管,c 蝸牛,c' ラセン孔列,fo 前庭窓,fr 蝸牛窓,re 卵形嚢陥凹,rs 球形嚢陥凹,av 前庭小管.

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最終更新日13/02/03

 

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