Rauber Kopsch Band2.662   

B. 膜迷路Labyrinthus membranaceus, häutiges Labyrinth

 膜迷路はよく発達した中央部と,それから発する特有の形をした何本かの管からできている(図698, 699).これらの管の多くのものは平衡覚部Pars staticaと総称され,これに対して聴覚部Pars auditivaというのは蝸牛管だけからなっている.中央部を構成するのは2つの小嚢で,その1つはやや長く伸びた形の卵形嚢Utriculus,もう1つはだいたい円いがやはり多少つぶれた形の球形嚢Sacculusである.中央部から出ている管は3つの膜半規管Ductus semicirculares,内リンパ管 Ductus endolymphaceus,連嚢管Ductus utriculosaccularis,結合管Ductus reuniensとこれに続く蝸牛管Ductus cochlearisである.卵形嚢は長さ5~6mm, 球形嚢は長さ3mm,幅2mmである.

 卵形嚢は球形嚢の壁と1ヵ所で寄り合っている.といっても両者の壁が融合して1枚の壁に,つまり1枚の隔壁になっているというわけではなく,両者の壁はたがいに分離している.内径0.17mmの細長い1本の管が両嚢と開放性に結合しており,これを内リンパ管Ductus endolymphaceusという.内リンパ管から球形嚢につづく脚の方が太くて,もう1つの卵形嚢に開く脚の方が細い.後者を連嚢管Ductus utriculosaccularisという.内リンパ管はその末端部でふくらんで,内リンパ嚢Saccus endolymphaceusというかなりの大きさの平たいふくろになっている.これは長さ約1cm,幅5~8mmのふくろで,前庭小管の内口より外側にあり,側頭骨の錐体乳突部の後面に接して硬膜の2葉のあいだにはさまれている.その方向は下外側方へと伸びている.

 なお卵形嚢からは3つの膜半規管Ductus semicirculares, hdiutige Bogengängeが出ている.その横断面は楕円形で長径0.5~0.58mm,短径0.3~0.4mmである.長径は半規管の弯曲線を含む面に垂直の方向である.

[図698]胎生5カ月の人胎児で右の耳の膜迷路を内側からみる(Retziusによる,多少改変)×10

S.662   

最終更新日13/02/03

 

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