Rauber Kopsch Band2.663   

各半規管は全円周の約2/3の弧をえがいている.しかも3つの管がたがいにほぼ垂直の平面内にある.

 三つの半規管はその位置によって上,後および外側[膜]半規管Ductus semicircularis superior, posterior, lateralisに区別される.成人ではこれらの膜半規管は骨半規管内のそれぞれ定まった位置に,結合組織索によってつなぎとめられている(図706).

 おのおのの膜半規管は2つづつの脚をもっていて,それによって卵形嚢に開いている.したがって6つの開口があるはずであるが,鉛直方向の2つの半規管(上および後半規管)の相寄る2脚が開口のかなり手前で合して,1本の共通な管(総管Ductus communis)をつくっている.それゆえ半規管が卵形嚢に開く口は5しかない.かなり根拠のある別の見解によれば,総管は卵形嚢の一部が太い管状になった部分であって,卵形嚢上洞Sinus superior utriculiとよぶべきものであるという.これに従えば,すべての半規管をあわせて,6の口が卵形嚢に開くことになる.

 半規管の開口部や終末部がみな形や意義を同じくするものではない.半規管の初部Anfa ngsteileとよばれる3つの開口部は,著しくふくらんでいることと,神経上皮をもつ1つの隆起がそのふくらんだ内腔へ出ていることを特徴としている.このふくらんだ初部は膜膨大部Ampullae membranaceaeとよばれ,神経上皮をもつ隆起は膨大部稜Crista ampullarisとよばれる.従って膨大部は3つあるわけで.それぞれ上(前),後,外側膜膨大部Ampulla membranacea superior, posterior, lateralisとよばれる.膨大部稜もまた3つあって,それぞれに1本ずつ前庭神経の枝が行つて,そこに終末している(図698, 699).

 上半規管と外側半規管の膨大部および膨大部稜は,たがいに非常に近よっている.これに反して後半規管の膨大部と膨大部稜は他の2者と非常にはなれた所にあり,反対がわにあるといってもよいほどである.3つの膨大部は形と大きさがほぼ同じであって,その径は半規管の伸びている方向には2~2.5mmであるが,それと直角の方向には1.5mmである.膨大部の神経が進入するところは半規管の凸側にあって,膨大部溝Sulcus ampullarisという横走する1本の溝として示されている.膨大部稜は半月形をなして横の方向に伸び,膨大部の全周の1/31/2を占めている.

 膨大部以外の半規管の全領域には,いかにしらべてみても神経終末がみつからない.膨大部のない方の脚も,とくに外側半規管では明かに軽いふくらみをなして卵形嚢に開いているが,やはりここにも神経は来ていない.

 卵形嚢と球形嚢においても神経上皮は壁の一定部分に限られている.すなわち両嚢はそれぞれ1つの神経終末領域をもっているのであって,これを平衡斑Maculae staticae という.

 卵形嚢斑Macula utriculiは平らな卵円形で,長さ3mm,幅2.4mmである.卵形嚢の底の一部と前壁の一部を占めて,さらにご㌧から外側壁にも伸びている.神経は上前方から卵形嚢斑に達する(図698).球形嚢斑Macula sacculiは卵円形(長径2.5mm,短径1.5mm)で長軸を上下に向けている.一さてこれら5つの神経終末領域のほかに,なお6の終末領域が蝸牛管のなかにある.

 蝸牛管Ductus cochlearis, Schneckengangの横断面は迷路の腔所の他の部分のように円かったり平たかったりせず,三辺形に近い形である(図686).また蝸牛管には2つの閉じた端がある.1つは球形嚢にとなる端で前庭盲端Caecum vestibulare, Vorhofsblindsackとよばれ,もう1つの端は頂盲端Caecum cupulare, Kuppelblindsackとよばれる.

[図699]膜迷路とその神経

1 内耳道内の顔面神経,2 前庭神経の前方部,その枝が5,8および9に分布しているところ.3 前庭神経の後部,その枝が6と10に分布する.4 蝸牛神経,5 卵形嚢,6 球形嚢,7 総管,8 上(前)膜膨大部,9 外側膜膨大部,10 後膜膨大部,11 外側半規管の後端.

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最終更新日13/02/03

 

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