Rauber Kopsch Band2.667   

この乳頭がもっとも多く見出される場所は膜半規管の側部,すなわちこの管を横断した楕円形において,もっともカーブの急なところである.しかし乳頭は半規管の凸のがわにも凹のがわにもないわけではない.

 内リンパ嚢にも同様の乳頭が見いだされた.

球形嚢・卵形嚢・膜半規管の固定(図704, 706)

 両嚢と膜半規管はそれぞれ前庭と骨半規管のなかで中央からはずれたところにその位置が固定されている.すなわち両嚢は前庭の骨壁のうちとくに内側壁に接してここに固着している.また膜半規管は骨半規管の凹側壁(弯曲の中心から遠いがわ)に接してここに固着しているのである.前庭と骨半規管は内面を薄い骨膜でおおわれている.両嚢と膜半規管とはまずこの骨膜に結合するのであるが,しかもこれらの膜迷路の結合組織性の壁と骨膜とのあいだには,かなりのすきまがある.つまりこれは膜迷路の結合組織の内部にふくまれる空所である.ここは一種のリンパ腔をなして外リンパPerilymphaによって充たされており,外リンパ隙Spatium perilymphaceumとよばれることはすでに述べた.

 アブミ骨底をとり去って,前庭窓から前庭の内部をのぞくと,そこに前庭の外リンパ腔の主要部分がみられる.外リンパ隙は前方では前庭階とそのリンパ腔につづいている.この前庭階が蝸牛孔のところで鼓室階へ移行する.その他のところでは鼓室階と前庭階は骨ラセン板と膜ラセン板によって隔'てられているのである.また外リンパ隙は鼓室に対しては第二鼓膜によって遮断されている.外リンパ管Ductus perilymphaceiという若干の管が,外リンパ腔と脳のクモ膜下腔とをつないでいる.このつながりのうちで重要なものが蝸牛小管であって,これは脳のクモ膜下腔と開放性に結合するのである.蝸牛小管にはそのほかに蝸牛小管静脈V. canaliculi cochleaeという1本の静脈が通っている.

 外リンパ隙は反対がわへも伸びて,半規管の凹側にある同様な腔隙につづいている.外リンパ隙はさらに内リンパ管の外面に沿って前庭小管め端にまで伸びる.外リンパ隙はまた,前庭の内壁を細かい神経管が多数貫くところで,頭蓋腔の方面へもつながりをもっている.この経路によってもクモ膜下腔と結合されているのである.

 前庭や骨半規管を被う骨膜の内面は粗になっており,これと両嚢および膜半規管の外面とのあいだには,いろいろな場所に結合組織索が張られている.これらの索はやはり骨包内にある軟い構造物の位置を固定するのに役だっている(図706).

前庭小管Canaliculus vestibuli

 前庭小管の内容として最も重要なものについてはすでに述べた.それは内リンパ管Ductus endolymphaceus(662頁)であって,それが盲端に終るところは広くなっていて,内リンパ嚢Saccus endolymphaceusとよばれるのである.さらにまた前庭の外リンパ隙のつづきが内リンパ管に沿って頭蓋腔の内面に達することも述べた.このリンパ路は前庭小管の骨膜と内リンパ管の壁の結合組織性部分とのあいだに存在する.前庭小管の内容としてはさらに1本のごく細い静脈があり,前庭小管静脈V. canaliculi vestibuliとよばれる.

[図703]ヒトの卵形嚢斑の平衡砂

平衡石が細かい粒子状の砂のなかにある.大きい結晶のいくつかには中央部に小球(空胞か?)がみられる.

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最終更新日13/02/03

 

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