Rauber Kopsch Band2.671   

これらの溝は密集した小さい上皮細胞でみたされている.この上皮細胞は突出の部分にもないわけではなくて,その表面に上って来てはいるが,ここでは扁平になっている.つまりラセン縁の全表面は上皮性の細胞で被われているのであって,各細胞のさかいは硝酸銀によってはっきり示すことができる.前庭階壁の上皮がラセン縁の上皮に直接つづいている.

 ラセン縁で上皮の下にある組織は非常にかたい線維性の結合組織であって,ここには枝分れした突起をもつ紡錘形の細胞がある.少数の血管が表面の近くまで達することがあるが,それは稀なことである.ときにはこの結合組織のなかに石灰塩が沈着して不規則な小板をなしていることがある.ラセン縁の下面は直接に骨ラセン板の骨組織に接している.したがってラセン縁は1種の変化した骨膜であるといえる.

ラセン溝Sulcus spiralis(図710)

 ラセン溝と鼓室唇Labium tympanicumとは蝸牛管の下壁の内方部に属しており,やはり蝸牛管の上皮によって被われている.鼓室唇の上皮の下にはラセン縁のかたい結合組織のつづきをなす薄い1層がある.

基底板Lamina basialis(図707710)

 骨ラセン板の結合組織性の成分は外方にゆくと薄くなって基底板につづいている.鼓室唇の端が基底板に移行するところには,約4000の孔が1列にならんでいることが著しい.これは神経孔Foramina nervorumとよばれて,蝸牛神経の線維束がここを通るのである.神経孔は卵円形でその長軸は放線方向に向かっている.また神経孔をもっている板にはHabepula perforata(穿孔手網)という名がついている.蝸牛神経は神経孔へはいる直前に髄鞘を失うのである.

 基底板は内方(ラセン軸に近い方)では鼓室唇において1線をなして始まっている.そして基底板の外方端は厚くなり,すでに述べたラセン靱帯Ligamentum spiraleの実質中に放散している.基底板はこれら両付着線のあいだにきつく張られているのである(図707).

[図709]第2回転におけるラセン縁と基底板の上(前庭階がわの)面

上面を被う上皮の大部分をとり去ってある(G. Retzius)×800

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最終更新日13/02/03

 

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