Rauber Kopsch Band2.673   

頭板はごく薄くて長く,矩形で,基底板とだいたい平行した面の上にある.その下面には外柱の舵をうけるための1本の縦の溝がある.頭板に対して柱頭からそれぞれ1本の下行する小さい突起が内方へ出て,2つの有毛細胞の自由端のあいだへ伸びて来ている.柱頭と頭板は隣りのもの同志で側面を非常に密に接しあっており,足板もそうである.しかし柱体と柱体のあいだには柱間隙Fissurae interpilaresというすきまがあいている.柱の実質は縦にすじがついており,これはおそらく角質線維を含むと思われる線維である.頭板もはっきりと縦走する線維の性状を示している.床細胞は柱体と基底板とにはさまれた鋭角のなかにある.

β)外柱もやはり放線方向に長く伸びた足板にはじまる.この足板は内柱よりずっと外方にはなれて基底板についている.また外柱にはそれぞれ1つのと,頭についているRuderという突起とがある.外柱は長さも幅も内柱よりいくらか大きい.したがってその数は内柱より少なくて,内柱の4個に対して外柱3個という割合である.体は断面が円くて内柱より幅が細く,かるくS字形にまがっている.幅がせまいために柱間隙が内柱におけるよりも広い.その四角形をした頭はたがいに密接して並んでいる.頭の内方の面は内柱の方に向かっていて,円く凸出して,2ないし3個の内柱の頭の,これに対応するへこみの中にはまっている.これに対して頭の外方の面は下から上へと軽くへこんでいる.おのおのの頭の外方縁の中央には1本のほつそりとした突起がついている.これはその先の方が舌か舵のように広くなっていて,Ruderまたは1列の節板Phalanx erster Reiheとよばれ,(普通には指節という訳語が用いられている.しかしPhalanxは元来「列をなすもの」という意味であって,手のPhalanxが指節であるからといって,聴覚器のそれをも指節と訳すのはま違っている.列板というのが最も正しいかもしれない.(小川鼎三))基底板と平行した方向にのびている.内柱のうすい頭板が外柱の頭の上へ伸びて来てこれを被い,また舵の内方部をも被っている.しかし舵め外方部は内柱の頭板に被われていない.外柱は内柱より数が少ないから,内柱の頭板のどれもが舵をうける溝をもっているわけではない.外柱の床細胞は内柱のそれと向いあわせになっていて,やはり柱体と基底板とにはさまれた鋭角のところに位置を占めている.

[図710]ラセン器の横断(放線方向の断面) (G. Retzius)

T トンネル, Nニュエル腔.

2. ダイテルス細胞Deiterssche Zellen(図710, 711)

 内方から外方へと見てゆくと,柱細胞の次にあるのがダイテルス細胞で,内外の柱細胞とは1つの間隙でへだてられている.ダイテルス細胞もまた支持構造に属する ものであって,小さい6角形の足板をもって基底板からはじまり,太さを増しながら斜め内方に傾いて上行し,長さの中央を過ぎてからはまた細くなって,節板突起Phalangenfortsatzという部分に移行している.この突起は網状膜をなす1個の節板と結合するのである.あるいはHensenが最初に見いだしたように,節板はそのダイテルス細胞の上端面が広くなったものじしんであるともいえる.細胞体の太くなった中央部では原形質が著しく顆粒状をなしており,またここに球形の核がある.

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最終更新日13/02/03

 

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