Rauber Kopsch Band2.676   

この細胞は網状膜の表面に対してはほぼ垂直に立っているが,基底板に対しては内方に開く鋭角をなしている.上端は網状膜のそれぞれの孔にはまりこんで,その中に固定されている.外有毛細胞の細胞体は,新鮮な状態では明るくて透明で円柱状であるが,下半部が多くのばあいやや膨らんでいて,円錐に近い形をしている.細胞の側面は境界がはっきりして,原形質の辺縁層はわずかに顆粒性を呈している.細胞の下半部に大きい球形の核がある.また上半部には卵円形または円形の特有な暗さをもった小体があって,ヘンゼン体Hensenscher Körperまたはラセン体Spiralkörperとよばれる.ヘンゼン体の実質は顆粒状で,1本の明るいラセン状の糸によって巻かれているように見える.外有毛細胞の下端部はかどがとれて円くなっており,ほかの部分よりも強く顆粒性である.下端は基底板にまで達することなく,ダイテルス細胞の頚のところまでしか伸びていない.この細胞には神経原線維が密に絡みあっており,とくに細胞の基底部でこれが最も密になっている.

 外有毛細胞の上端面の形は,どの列の細胞であるかによっていくらか異なっている.とくに第1列の細胞は上端面の内方縁が直線状になっている.しかし端面のかたちは一般には卵円形で,その長軸は放線方向をとっている.毛線は外方へ多少とも強く凸弯した弧をえがいている.毛の数はHeldによれば第1列の細胞では83本,第2列の細胞では100以上である.ここに述べた数字は第2回転で得られたものである.これらの毛は長さがやや短いことを除けば,内有毛細胞の毛と同じ性状である.

 外有毛細胞の列の数には蝸牛管の各回転によって差異がある.すなわち(第1の)底回転では細胞が3列しかないのが普通であって,しかもところどころで細胞が1つ欠けている.(第2の)中回転では4が現れるのが普通であるが,そのさい前からあった列の細胞も完全に存在するのではなくて,新しい第4列の細胞と同様に多少の欠員を示す.頂回転では不連続ながら5ともいうべき細胞さえ現われる.第5の列は個々ばらばらの少数の細胞からできている.

 この点については個体差も認められる.第4列はヒトでは動物よりよく発達している.しかし以前に考えられていたように動物に第4列が存在しないわけではない.このことはRetziusによって,例えばイヌや家兎について証明された.ここで内有毛細胞について一言すると,これは普通は単一の列をなしているのだが,2列の内有毛細胞ともいうべきものが,ところどころで第1列の内方にみられる(Retzius).

6. ラセン器の内・中・外の上皮内腔(図710)

 上皮内(上皮細胞間)腔interepitheliale Räumeについては内方のものと中央のものとをすでに述べた.すなわち内方の上皮内腔はラセン器の内方の傾斜部にある細胞間のすきまとして,また中央の上皮内腔はトンネルTunnelraumとして述べたのである.外柱の列の外側,つまり外柱とその外方に続くラセン器の部分とのあいだに,これまたラセン状に走るかなり大きい腔隙(ニュエル腔Nuelscher Raum)がある.この腔隙は外柱間裂Fissurae interpilares externaeによってトンネルとつながっている.同様にして内方の上皮内腔は内柱間裂Fissurae interpilares internaeによってトンネルとつながる.つまりこれらの上皮内腔はすべて相互につながりあっているのである.ニュエル腔は外方でさらにいっそう小さい上皮内腔につづいている1それはダイテルス細胞と外有毛細胞(おそらくはヘンゼン細胞も)とのあいだにある腔隙である.そしてこれらの腔隙のすべてが内リンパEndolymphaという液体でみたされているのである.

[図714]内および外有毛細胞の端面とその感覚毛

ヒトの第2回転から(Heldによる)

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最終更新日13/02/03

 

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