Rauber Kopsch Band2.677   

7. ラセン器内の神経終末(図710)

 ラセン神経節から起る細い神経束は,無髄になって鼓室唇の神経孔を通過してのち,上皮内に位置を占めてラセン器の上皮細胞間迷路のなかを一部は放線方向に,また一部はラセンの方向にひろがってゆく.

 ラセン索spira lige Stränge(ラセン方向に走る神経の集のは5ないし6本またはそれ以上ある.

α)1ラセン索すなわち内ラセン索erster od. innerer Spiralstrangは内柱の内方にあり,内柱の内方面に密接していて,多少とも柱足に近いところにある.神経孔を通りぬけた神経束は幅のせまい線維束に分れて,その大部分がこの内ラセン索に移行する.そしてこの索から内有毛細胞の下端をとりまく神経糸が出るのである.

 さらに第1ラセン索からはごく細い神経束がでて,内柱間裂を通りぬけてトンネルにはいり,内柱細胞の足の近くで2ラセン索zweiter Spiralstangすなわちトンネル索をつくる.

β) トンネル索Tunnelstrangからは短い間隔でつぎつぎに放線状トンネル線維radiäre Tunnelfasernがでて,外柱間裂を通りぬけて外有毛細胞の下端のところに達し,そこで大部分がラセンの方向にまがって3ラセン索dritter Spiralstrangをつくる.

γ)3~第6ラセン索drittebe bis sechster Spiralstrangはそれぞれ第1~第4列の外有毛細胞の下端の近くにある.すなわちダイテルス細胞列のあいだにも,ダィテルス細胞の第1列と外柱の列とのあいだにもある.ダイテルス細胞の細胞体の上部に密接して存在する.これらのラセン索から短い間隔でつぎつぎと神経糸がでて外有毛細胞の下端にいたり,その細胞周囲に終る.

8. 被蓋膜Membrana tectoria(CortiI) (図707, 710).

 被蓋膜はラセン縁・ラセン溝およびラセン器を被うところの上皮から初期につくられるものである.完成した状態では被蓋膜は骨ラセン板に前庭階壁が付着するところから,いちばん外方の有毛細胞のところまで伸び,前掛のようにコルチのラセン器を被っている.被蓋膜は新鮮なときには柔かで弾性にとんでいる.これに内外の2領域が区別される.内方の薄い領域はラセン縁に属している部分で,一種の接合質Kittsabstanzによってラセン縁に付着している.また外方の領域はラセン溝とラセン器との上へ遊離した状態で張りだしている部分で,その中ほどのところが厚くなっているが,端の方はまた薄くなっている.被蓋膜の自由縁は底回転では1本の輝く索をなし,中回転では太い線維の網, 頂回転では細い線維の網をなし,その線維は最外方の有毛細胞の上へ遊離して伸びだしている.被蓋膜のほぼ中央にはヘンゼンの線条Hensenscher Streifenが輝きをもった1本の扁平なリボンとしてみとめられる.その位置は内有毛細胞より少し内方に当たっている.被蓋膜は無数の微細な線維からできている.ごの線維は内方かつ底側から外方かつ頂側へと走り,酢酸に対する抵抗性がはなはだ強い.また最外方のダイテルス細胞には,胎生期に被蓋膜がくっついていた名残の付着片がところどこに見られる.

蝸牛管の構造の部位的差異

 以上のべたことからわかるように,ラセン縁も基底板の幅も,ラセン器とその有毛細胞も,被蓋膜も,ラセン管の全長にわたって完全に同じ状態を示すのではない.全回転にわたる構造上の差異は,すでに蝸牛管の各構成部分を観察したときに述べたのである.ただ頂盲端についてもう一言ふれておかねばならない.ここでは聴歯が次第に長さと幅を減じ,ついには完全に消失してしまう.ラセン縁も低くなって終る.聴歯の消失と同時にラセン器もなくなるのである.

B. 鼓室階と前庭階Scala tympani et vestibuli(図685, 700)

1. 蝸牛壁

 蝸牛の骨壁は外板Lamina externa,内板Lamina Interna,および両者のあいだにある板間層Diploëの3層からできている.内板は蝸牛軸のほか各階の隔壁と外壁の基層をなし,外板(骨包)は蝸牛をひとまとめにして包んでいる.

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最終更新日13/02/03

 

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