Rauber Kopsch Band2.678   

板間層の小梁のあいだには脂肪組織や血管がある.内板はまた蝸牛窓の第二鼓膜の基礎をもつくっている.ラセン孔列と蝸牛小管の内口のところでは,内板に孔があいている.

2. 骨膜

 両階の空間的関係と蝸牛管に対する関係についてはすでに述べた(660頁).蝸牛のまがった管の内面と骨ラセン板は,全長にわたって骨膜で被われている.この骨膜は内腔に面するところを一種の内皮によって裏うちされている.骨膜には細かい弾性線維がかなり豊富で,またところどころに褐色調の星形の色素細胞が散在している.

3. ラセン靱帯Ligamentum spirale

 蝸牛ラセン管の最も外方へ凸出したところで,骨膜は基底膜から放散するラセン靱帯をうけている(670,  671頁参照).さらに鼓室階に属するものとして:

4. 第二鼓膜Membrana tympani secundaria

 すでに述べたように蝸牛窓は第二鼓膜という結合組織性の膜で閉ざされている.第二鼓膜の鼓室階に向う面は外リンパ隙の壁の一部をなすために内皮で被われており,これに対して鼓室に向う面は,血管と神経をふくむ鼓室粘膜の薄いつづきで被われている.

5. 蝸牛小管Canaliculus cochleae(図689)

 蝸牛小管の内口は鼓室階の初まりのすぐ近くで鼓室階の床にあり,ロート状を呈している.蝸牛小管のなかにあるものが球形嚢や卵形嚢のつづきではないことは,今まで述べたことから明かである.この小管のなかには結合組織と蝸牛小管静脈V. canaliculi cochleaeという1本の静脈と,1本の外リンパ管があるにすぎない.蝸牛小管静脈は頚静脈上球Bulbus cranialis venae jugularisに注ぐ.外リンパ管は蝸牛の外リンパをクモ膜下腔につないでいる.

D. 迷路の脈管Vasa labyrinthi

1. 血管(図715, 716)

迷路の動脈は次のものから来ている:

1. 脳底動脈A. basialisから迷路動脈A. labyrinthiが出て迷路にいたる.迷路動脈は内耳神経に沿ってすすみ,前庭枝と蝸牛枝に分れる.前庭枝Rami vestibularesは2つの前庭嚢および3つの半規管に枝を送る.平衡斑と膨大部稜では密な」血管網をなすが,そのほかの前庭と半規管の領域では目のあらい網をなしている.蝸牛枝Ramus cochleaeは蝸牛にはいるところで多数の枝に分れる.これらの枝の一部は直ちに第1回転に分布するが,他の部は蝸牛軸の中を通ってすすむ.蝸牛軸から出てゆく枝はこの軸の実質の中で大小の糸球状の集りをなしている.小さい糸球は骨ラセン板の起始部のやや上方にあって前庭唇に分布し,ラィスネル膜の毛細管(それが存在するかぎりで)へも血液をあたえている.これに対して大きい糸球は回転の隔壁の基部にあって,2つのたがいにはなれた血管領域に血液をあたえている.すなわちすぐ下にある回転の血管条Stria vascularisと膜ラセン板とである.

2. 後耳介動脈A. retroauricularisからの枝.この動脈からは茎乳突動脈A. stylomastoideaが起り,これがa)蝸牛窓を通して蝸牛へ1枝を送り,またb)アブミ骨枝R. stapediusというさらに細い1枝をアブミ骨と岬角に送っている.このアブミ骨枝は顔面神経管の全長のほぼ中央で茎乳突動脈から分れ,アブミ骨閉鎖膜を貫いて岬角に達し,ここで前鼓室動脈A. tympanica anteriorの小枝と結合して,アブミ骨ならびにアブミ骨閉鎖膜に血液をあたえる.

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最終更新日13/02/03

 

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