Rauber Kopsch Band2.680   

 蝸牛の静脈は隆起血管Vas prominensと蝸牛軸ラセン静脈V. spiralis modioliに集る.

 上に述べたことでわかるように,前庭階は動脈によって,鼓室階は静脈によってめぐらされている.従って鼓室階の上方に接する膜ラセン板は,動脈の搏動から全く隔絶しているわけである.

 残りの静脈は前庭静脈Vv. vestibularesであって,これは迷路静脈Vv. labyrinthiに注ぎ,迷路静脈は下錐体静脈洞または横静脈洞に開く.蝸牛小管の中を蝸牛小管静脈V. canaliculi cochleaeが通っており,これは蝸牛の第1回転からの血液を頚静脈上球に導く.また前庭小管の内口からは前庭小管静脈Vv. canaliculi vestibuliというごく細い静脈が入りこんで下錐体静脈洞に達する.

 迷路とくに蝸牛における脈管と血流についてはJ. Eichler(Anatomische Untersuchungen Über die Wege des Blutstromes im menschlichen Ohrlabyrinth, Leipzig 1902)およびF. Siebenmann(Die Blutgefäße im Labyrinth des menschlichen Ohres,11図葉つき, Wiesbaden 1894)を参照せよ.

2. リンパ管

 内ラセン血管Vas spirale internumは明るい量にとりかこまれて,そこに血管周囲リンパ管といったものが存在するらしく見える.膜迷路の周辺の顕著なリンパ隙とそれらの結合については 667頁に記した.

[図717]内耳神経(その前庭神経)の末梢における終末の模型図 (G. Retzius, Biolog. Untersuchungen, Bd. IV,1892)

 

V. 外皮Integumentum communeまたは皮膚Cutis

1. 皮膚とは何か

 外皮äußere Hautは平たく広がって全身を被うところの器官であり,これを貫いて数多くの器官が外へでている.皮膚を貫く器官には2群があって,それは角質器とである.外皮じしんおよび外皮に特有な諸器官はすべて次の2つの構成部分からできている.1つは外胚葉に由来する上皮性の部分すなわち表皮Epidermisで,もう1つは結合組織性の部分すなわち真皮Coriumである.真皮の下には皮下組織Tela subcutaneaがある.

2. 皮膚のはたらき

 外皮は次のようないろいろな方面のはたらきをしている.

1. 内部を保護する被いとして,2. 貯蔵器官として,3. 体温調節器として,4. 分泌器官として,5. 感覚器官として.

 皮膚はその著しい丈夫さと,またその弾性が少ないけれども完全なことによって,まずもって体を保護する被いの役目をしている.皮膚は引きのばそうとする力には容易に従うのであるが,その力が止むと弾性の残留効果をあらわすことなく,もとの状態にもどる.もしも引きのばす力が弾性の限界をこえると,皮膚に変化があとまで残り,それが高度になると構造変化Strukturveränderungen(非可逆的な変化)として現われる.構造変化に属するものとしては腹部の皮膚の姫娠線Striae gravidarumや,病的な腫瘍による皮膚の過伸展の結果として現われる変化などがある.皮膚は正常な状態でも軽度ながら弾性緊張の状態にあり,皮膚の下にあるすべてのものを,やわらかい力で圧しているのである.

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最終更新日13/02/03

 

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