Rauber Kopsch Band2.682   

7. 皮膚の色

 皮膚はある程度の透明性をもっており,皮膚がうすいところでは静脈が青くすけて見えるばかりでなく,下にある脂肪組織や腱・筋膜・筋なども皮膚の色調をある程度まで左右しうるのである.

 下にあるものの影響も問題になるが,何といっても皮膚そのものの色が重要である.皮膚の固有の色は次の2つの要素の総合である:1. 血液の含有,2. 色素の含有(684,  685頁をも参照).色素沈着の強さは個体的にも人種によっても異なるが,また同一の人でも,光やその他の刺激(妊娠・病気・機械的刺激)の影響のもとに変化する.とくに色素沈着の強いところ嫡(白人では),乳頭・乳輪・腋窩・陰部・会陰部・眼瞼である.(日本人でも同様であるが,眼瞼の色素沈着はヨーロッパ人のように顕薯ではない.(小川鼎三))手掌と足底ではほとんど全く色素沈着がない.--妊娠中に白線Linea albaのところに色素が沈着し,すでに以前から色素の多い場所がいっそう暗い色になる.--とくに色素が多く集まっている場所として,いろいろな型の色素斑Pigmentflecflen(ほくろMuttermalとよばれる)と,いわゆるそばかすSommersprossenが知られている.

8. 皮膚の表面の性状

皮虜の表面には大小さまざまの隆起や陥凹がある.

 皮膚の隆起は枕状・球状・栓状のもの,ひだをなすものや皮膚小稜Cristae cutisとよばれる隆線など,それぞれに特色がある.左右の乳腺は半球状の強い隆起をなし,乳頭は栓状に突出している.皮膚の永久ヒダbleibende Falten(Dauerfalten)としては陰唇.包皮・包皮小帯・陰核小帯・陰唇小帯がある.一時的のヒダvorübergehende Falten(収縮ヒダKontraktionsfalten)は筋肉のはたらきによって皮膚にたくさんできるもので,額にしわをよせたり,体肢や体幹をまげたり伸ばしたりするときに現われるのがこれである.重要な意味をもっているのは手と足の触覚小球Toruli tactiles, Tastballenで,これはいくつかの序列に分けられている(688頁参照).隆線状の高まりすなわちいわゆる乳頭線Papillarlinienはいろいろな配列のしかたで,触覚小球の領域内にもその外にもたくさんある.特別な種類の突出部としては上唇結節Tuberculum labii maxillarisがあり,また2つの強い縦の隆線が人中Philtrumを囲んでいる.軟尾(軟組織性の尾)Weichschwanzはすでに病理学の範囲に属する.これは脊椎下端部のつづきに生ずる皮膚の高まりで,そのなかた脊椎はなく,たず脂肪をふくむ結合組織がはいっているだけのものである.

 皮膚の陥凹としては大小いろいろのくぼみやしわや皮膚小溝Sulci cutisとよばれる溝などがある.また皮膚の裂孔もこれに属するのである.

 大きいくぼみには腋窩, 鼡径部のくぼみ,耳介のくぼみ(耳介は軟骨で支えられた皮膚のひだとみなすことができる),外耳道,乳洞Sinus mammarum,臍窩Fovea umbilicalis,尾骨小窩Foveola coccygicaなどがある.尾骨小窩は尾骨を被うところの皮膚にあって,普通は小さいが場合によってはかなり大きいくぼみで,発生学的にほ脊索の下端が尾骨皮膚支帯Retinaculum caudale cutisとして尾骨部の皮膚に停止することと関係がある.尾骨小窩はまた隆起した場所になつでいることがあり,その周辺の皮膚に比べて色素の少ないことが目だつのである(第I巻263頁参照).

 いろいろな皮膚腺が皮膚の表面に開く場所にあたって,小さいくぼみがはなはだ多数あるが,これはだいたい顕微鏡的観察の対象となるものである.

 永久溝bleibende Furchenは多数存在する.その例として鼻唇溝・オトガイ唇溝・人中・眼瞼溝などがあげられよう.また局所解剖的に重要な関節溝Gelenkfurchenもこれに属するのである.皮膚表面の微細な溝にいたっては,たとえば手背を見てもわかるように無数である.手背では溝の主な方向は横であ,るが,中手指節関節のあいだでは縦に走っている.そしてこれらの溝はたいてい菱形や三角形の目をもつ網をなしている.

 皮膚の裂孔は皮膚が体の深部べはいりこむ門であって,皮膚はそこで次第に粘膜に移行する.このような門として眼瞼裂・白裂・外鼻孔・肛門・外尿道口・腟口がある.

 多くの人,とくに婦人の腰部と仙骨部にみられる菱形の領域には腰菱形Lendenrauteおよび仙骨菱形Kreuzrauteという2つの主要型が区別される.

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最終更新日13/02/03

 

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