Rauber Kopsch Band2.683   

9. 皮膚の各層と微細構造

 皮膚の主な層は表皮Epidermisと真皮Coriumと皮下組織Tela subcutaneaである.

I.表皮 Epidermis, oberhaut(図727, 728, 755)

 表皮は30µから4mm(=4000µ)の厚さで,たいていの場所では50~200µである.重層扁平上皮からなり,少なくとも次の2層がどこでもみとめられる.

a)胚芽層Stratum germinativum, Keimschicht od. Schleimschicht:深層を占める比較的柔かな層で,真皮の乳頭のあいだにあるくぼみを充たし,さらに乳頭の高さより少し上方にまで及んでいる.

b)角質層Stratum corneum, Hornschicht:表層にあって,いっそう固い層である.

 手掌や足底をはじめとして皮膚が非常に厚いところでは,次の4層が区別される.

1. 角質層Stratum comeum

2. 淡明層Stiatum lucidum

3. 顆粒層Stratum granulosum

4. 胚芽層Stratum germinativum(これは以前にマルピギー網Rete Malpighiiとよばれだものである).

 これらすべての層を構成する上皮細胞は,各細胞層層によってそれぞれ異なっている.胚芽層の最深層のものは円柱状の小さい細胞で,長めの核をもっている.ここでは有糸分裂によって若い上皮細胞ができる.細胞分裂の能力は程度はずっと弱いながら,胚芽層の最深層以外の細胞層にもひろがっている.胚芽層という名はそのためである.Patzeltによればかなり著しい無糸分裂が胚芽層の上部の層にみられる.角質層の最表層からたえず剥げ落ちて朱われてゆく分め補充はこの胚芽層によって絶えまなくなされ,そのさい胚芽層の外層の細胞はしだいに角質層の型に変わってゆく.

 胚芽層の細胞には別に細胞膜というようなものはまだ存在しない.顆粒層に至ってはじめて.ごく薄い細胞膜が現われるが,その抵抗力になお後微々たるものである.しかしさらに上層になると租胞膜が次第に厚くなり,抵抗力も増してくる(Hoepke).

a)胚芽層Stratum germinativum, Keimschicht(図719, 727, 728)

 胚芽層のすべての細胞の特徴はその全周に棘をつけていることで,これは細胞間橋Interzellularbrückenとよばれて,多数の細かい突起が隣りあう細胞の表面どうしのあいだに張られているのである.この細胞はそれゆえ有棘細胞Stachelzellenとよばれる(図719, 728).それぞれの細胞間橋は中央部に1つの膨らみがあって橋小節Brückenknötchenとよばれる.この小節はPatzeltによれば接合質からできているというが,Hoepkeはそんなことは全くありえないという.

 棘はもともと不完全な細胞分裂の名残を示す,すなわち原形質橋Protoplasmabrückenにほかならない.しかしのちに細胞膜が形成されるとともに棘は剛さをまし,何よりも固定系として役だつようになる.これは注目に価する現象である.そのようになっても網胞膜の内部にあいかわらず原形質糸が残っているかどうか,つまり両細胞のあいだに原形質のつながりがあるかどうかは疑問であって,その解答もまちまちである.この点に関して重要な知見は,ある染色法によって細胞体の内部に棘とつながっている糸状構造(図719)が示され,それが棘の中へつづくことが証明されたことである.この装置は力学的な方面から意味づけられている.たしかにこの装置によって固定系の全体がよりどころを得ている.この線維束はあらゆる方向に交叉しあっている.線維の交叉点のところに細胞があって,細胞は線維束によって貫かれているのである.最も深い細胞層でもその細胞体の基底部に線維束があって,これが真皮の結合組織とのかたい結合をつかさどつている.--しかしPatzeltによると真皮との結合は主として上皮に由来する接合質がなしているという.

 細胞間橋のあいだにある腔隙は重要な上皮内(上皮細胞間)液迷路interepitheliale Saft-Labyrinth(図719, 728)であって,その中をたえず液が流動していて,いく層にも重なる上皮塊の代謝にあずかっている.つまり上皮内迷路は脈管系の付属物といえるものなのである.迷路内には少数の遊走細胞(リンパ球)が散在する.

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最終更新日13/02/03

 

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