Rauber Kopsch Band2.684   

また結合組織の色素細胞とその突起は上皮内迷路にはいりこむことができる.なお,この迷路は無数の上皮細胞間知覚神経の豊富な終末分枝のために広い場所を提供している.--上皮内迷路は受動的にも能動的にもかなり拡張しうるものである.

 皮膚色素Hautpigmenteによって皮膚のさまざまな色調が左右されるのであるが,それはこの胚芽層の中でのできごとである.皮膚色素の由来についてはまだはっきりわかっていない.皮膚色素はからだ全体の色素産生の部分的現象にすぎない.外胚葉性の上皮細胞は血液から供給される材料から色素を産生するか,またはそれを集積することができる.しかし色素を産生したり,あるいは集積する性質は,多くの中胚葉性結合組織細胞すなわち結合組織の色素細胞がまた高度にもっている.上皮の胚芽層にふくまれる色素は胚芽層が自力でつくるものなのか,あるいは集積するだけのものなのか,また胚芽層が結合組織の色素細胞を媒介者として利用しているのか,あるいは上皮細胞が色素をつくってそれを結合組織の色素細胞にひきわたすのか.これは決定のむつかしい問題である.

 多くの動物で周期的におこる皮膚の色素脱失Depigmentierelngにいたっては,研究がはなはだ不充分である.いろいろな色素の化学的性質についての知見も,まだごく不完全なものである.

 色素の由来についてはさておくとして,皮膚の固有の色調は胚芽層の深いところの細胞内に,黄色・明るい褐色・暗い褐色・帯赤色などの細かい顆粒が存在することに基づいている.胚芽層の細胞はだんだんと外方へ移動してゆくので,角質層の最も外側の細胞のなかにまで色素が残っている.はじめのうち色素顆粒は細胞の外方の極Außenpolに寄って集まっていることが多い.核には顆粒がない.顆粒の集積は次第に著しくなる.溶けた状態の色素は細胞間にも細胞内にも存在せず,色素はかならず顆粒のかたちで現われる.以上のことは皮膚の全面にわたってみられるが,ただ色の暗い皮膚領域では色素の沈着が豊富であり,顆粒の色調も濃いのである.皮膚の色の暗い人種でも以上の過程は同じであって,明るい皮膚をもつヨーロッパ人と暗い皮膚の人種とのあいだに量的な差異があやだけのことである.

 黒人の子供は明るい皮膚をもって生れる.生後2, 3日で暗い色素沈着が一定の部位に現われ,すみやかに全身にひろがってゆく.その順序は:爪の縁,乳頭,外陰部,頭(生後5~6日目),そのほかの部分(Camper). Collignon, R, Bull. Soc. Anthrop. Paris,1895/96.

 色素沈着の本態を知るのに重要なことは,一定の病気の場合に色素の沈着が起らない,ことを注意することである.この状態を白色症Albinismus,またこの状態の所有者を白子Albinoとよび,動物にも現われる.その反対は色素過多症Überpigmentierungである.

[図718]皮膚の色素形成についての説をしめす模型図

I 細胞の上部に色素がたまりかけた上皮細胞,II 3つの上皮細胞,その下に結合組織の色素細胞が1つあって,その上方の突起が上皮細胞閻迷路に侵入している.

[図719]手掌の表皮の横断

表皮の下部の模型図(E. Kromayer) a 円柱細胞層,b 基底線維(付着線維),これに属する核は断面に現われていない.c あらゆる方向へすすむ線維をもった細胞層,d 皮膚の表面に平行な線維をもった細胞層,e 線維がこわれてケラトヒアリンになりはじめている細胞層,f 顆粒層,g 角質層(のごく小部分のみを示す).

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最終更新日13/02/03

 

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