Rauber Kopsch Band2.686   

 Adachi, B., Hautpigmente. . . Anat. Anz., 21. Bd.1902. 人の皮膚の真皮には2種の結合組織性色素細胞がある.たいてい上方にある小さい細胞と,たいてい深層にある大きい細胞とである.--Hoepke, H., Die Haut, in Handbuch mikr. Anat., Bd. III,1,1927.--Patzelt, V., Z. mikr.-anat. Forsch., 5. Bd.,1926 und 17. Bd.,1929.--Rabl, H., Arch. mikr. Anat., 48. Bd.,1897.

II. 真皮Corium, Lederhaut(図720727)

 真皮は全体として0.3~2.4mmの厚さで,多くの場所では0.5~1.7mmである.真皮は表皮に接する乳頭層Stratum papillareと網状層Stratum reticulareからなるが両層の境ははっきりしておらず,自然に移行しあっている.両層は主として網状に組みあった結合組織束からできており,弾性線維や細胞や平滑筋線維がそれにまじっている.乳頭層では結合組織束が細かくて緻密な叢をなし,それが乳頭のなかへも伸びている.

 表皮と真皮の結合は非常に強固でなければならないが,反面また表皮内のリンパが流れでたり,遊走細胞が通つたり,ほかの結合組織細胞の突起が通れるようになっていなければならない.その結合の様式はいろいろに説かれている.Patzeltは主として上皮から由来する接合質をみとめている.しかしHoepke(Ergeb. Anat., 25. Bd.,1924)の考えでは,この結合は表皮の基底部の細胞が真皮の表層と鋸状にかみ合っていることと,表皮内の線維が結合組織の線維とつながっていることによるという.表皮には特別に基礎膜といったものはない.

 網状層では結合組織束が粗大で,叢をなして交叉しあう束がずっとあらい網目をなしている.弾性線維は真皮の全体にゆきわたっており,これが乳頭層では細かい網,網状層では粗い網をなしている.細胞は扁平または紡錘形の結合組織細胞もあれば,結合組織性色素細胞もあり,また白血球や脂肪細胞もある.筋線維は大部分が平滑筋に属するもので,これがつづいた層をなして存在するのはごく限られた場所だけで,陰嚢の肉様膜Tunica dartosをはじめとして乳輪・乳頭にそれがある.しかしたいていの場所では小さい筋束をなして真皮内のいたるところに分布し,その多くのものが毛包と深い関係にあるが,毛や腺と結合していない皮膚の平滑筋も存在する.(詳しくは立毛筋の項を見られたい.)横紋筋線維は表情筋の放散として顔面に豊富に存在する.

[図720]皮膚の裂隙線の方向(C. Langer)

 ところで網状層をなす結合組織の骨組みは不規則なフェルトといったようなものではなくて,だいたい面の方向にひろがった規則正しい骨組み構造Gerüstwerkをなし,その網の目はほぼ直角のものもあれば菱形のものもあり,線維束が平行に走っている場合ほど網の目がせまい.線維束が関節運動などによって緊張すると,線維束はほぼ平行に並ぶことになる.緊張した皮膚片を革紐状に裂くことが困難でないのはこのためである.

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最終更新日13/02/03

 

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