Rauber Kopsch Band2.687   

緊張をゆるめると組織はまた以前の静止状態にもどる.

 千枚通しのような円錐状の道具で皮膚を突いて生ずる円い大きい刺痕は,道具を引きぬくとすぐに,体のたいていの場所で直線状の裂隙形を呈する.この裂隙線の方向Spaltrichtungは皮膚の結合組織の主な走向と一致している(図720).

 すでに述べたように皮膚は体の表面で絶えずある程度の緊張状態にあり,わずかな力で下にあるものを圧している一この緊張は揚所によってはすべての方向に均等であるが,また別の場所では不均等である.緊張が均等な場所で,円形にしるしをつけた皮膚片を切り出すと,切りだされた皮膚片は小さくなり,あとに残った孔は大きくなるが,いずれも円形のままである.ところが不均等な緊張の場所では結果が異なり,円形に切りとった皮膚とあとにできた孔とは楕円形になり,しかも両方の楕円の長軸がたがいに垂直である.

 乳頭層の特徴はその名が示すように乳頭をもっていることである.乳頭Papillaeは真皮の表面の乳頭状ないし円錐形の小さい高まりで,半透明でしなやかではあるが,かなり丈夫なものである.単純な形のものと先がいくつかに分れているものとがあり,単純乳頭einfache Papillenおよび複合乳頭zusammengesetzte Papillenという名で区別される.また別の分類で血管乳頭Gefäßpalbillenと神経乳頭Nervenpapillenを区別する.前者は1つの血管係蹄を含むもので,後者はそのほかに1つの神経終末小体,いわゆる触覚小体Tastkörperchenをもつで銃る(図755).高さのいろいろな乳頭がほとんど全身にわたって存在し,しばしば真皮のつくる特別な高まり(乳頭の株Papillenstockeや真皮の隆線)の上にのっている.手掌と足底にはおびたずしい数の乳頭がある.そしてここでは幅0.2~0.7mm,高さ0.1~0.4mmの規則正しくならんだ細長い真皮の隆起(乳頭の株が長くのびたものにほかならない)の上に乳頭がのっている.この隆線の上に乳頭が2つの主な列をなして出ている.そしてこの2列の乳頭のあいだを汗腺の導管が規則正しい間隔で,表面に垂直の方向にとおるのである(図722, 723).

[図721]指の真皮の1片を表皮を除いて示す(落下光線による)×5, 写真によって描く.幅のひろい暗い線は稜間溝に当る.そのあいだにある幅のひろい明るい条は各2本の乳頭列を示す.各2本の乳頭列のあいだの細い暗い線は乳頭間溝であって,汗腺管が通るところである.

[図722]皮膚小稜と乳頭をもつ皮膚の横断 小稜の走向に垂直の断面.

p 真皮の乳頭層,g 表皮の胚芽層(暗くかいてある),c 表皮の角質層,1 小溝,2 小稜の頂に汗腺管(s)が開いている,3 稜間溝,4 乳頭間溝

[図723]各乳頭列にいくつもの乳頭のある皮膚の断面(断面の方向は前図と同じ)

符号は前図と同じ. s', s'汗腺管. 表皮はとり除いて乳頭層の外面だけが示されている.

 以上のべたことにより,規則的な真皮の隆線の存在を特徴とするすべての場所では,乳頭層の表面に2種の溝があることになる.

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最終更新日13/02/03

 

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