Rauber Kopsch Band2.690   

 指紋Papillarlinienmusterとよばれる小稜の模様は人それぞれに異なっており,遺伝せず,一生を通じて変ることがない.この3つの事実のゆえに指紋は個人識別にとって充分な条件をそなえており,実際にいわゆる指紋法Daktyloskopieとして利用されているのである.Heindl, R., System und Praxis der Daktyloskopie, Berlin ,1922参照.これには紀元前から近年まで,この方面の学問の歴史についての,今までのところ最も完全な記載がなされている.

 触覚小球が機能的な意味をもつのは,もちろん神経系との豊富な結合があればこそである.皮膚の回転形成Gyrifizierungはそれ自体としては,上皮のその領域内での特別な成長方向を示すにすぎない.何となれば皮膚の乳頭構造は,成長しつつある上皮にひだができることによって生ずるという事実が,すでに示されているのである.

[図725]母指の掌側面の皮膚小稜と小溝 (表皮に被われたまま)×10

小稜が一部は平行に,一部は斜めにぶつかつて並んでいる.汗口は横にのびた小さいひだとして見える.

[図726]指さきの皮膚小稜の諸型(Purkinje)

a 横紋,b 中心紋,c 斜紋,d 斜蹄状紋,e 扁桃紋,f 渦状紋,g 楕円紋,h 輪状紋,i 二重渦状紋.

III. 皮下組織Tela subcutanea, Unterhautgewebe(図727, 729)

 網状層の内面からかなり太い白い線維束が深部へ伸びている.これは皮膚支帯Retinacula cutisとよばれて,皮膚を筋膜または骨膜に固定している.場所によってはこの支帯が固い索または枝をなしている.結合組織性の突起が皮下組織を貫く血管・神経・腺管・毛包にも伴なっている.

 皮膚支帯どうしを横につなぐ結合によって,大小さまざまの室ができている.その多くは脂肪組織で充たされており,かくしていろいろな程度に厚みのある脂肪層Panniculus adiposus, Fetthautが形成される.弾性線維をまじえた強い結合組織葉が水平にひろがって,それによって脂肪層がいくつかの層状の部分に分けられていることがある.

 脂肪層の厚さは頭円蓋・額・鼻で2mm,そのほかの場所では4~9mmであるが,ふとった人では30mm以上のことも稀ではない.ただし手と足背では脂肪層があまり厚くならないから,これは別としての話である.一定の場所で脂肪がとくに集まっている.すなわち頬脂肪体Corpus adiposum buccae(第1巻414頁)をはじめとして,閉鎖上窩・腋窩・鼡径部・恥丘・坐骨直腸窩・膝窩などである.また栄養のよい人では胸部・乳腺のまわり・頬・腹・臀部のほか,大腿や腕にも脂肪層がよく発達している.

 皮下脂肪層ははなはだ大きい貯蔽物質であって,生体はそれをほかの場所へもっていって燃焼させるなり,置き場を移すなり,あるいは分泌の目的に用いるなり,ともかく必要に応じて利用することができるのである.

 一般に女性は男性よりも脂肪層がよく発達する傾向がある.脂肪層の全重量が非常に著しい価になることはすでに述べた(681頁参照).

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最終更新日13/02/03

 

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